2008年6月27日金曜日

アスピーズ in 米国のIT業界

おもしろい記事が「COMPUTERWORLD.jp」という雑誌に掲載されていました。米国のIT業界で働くアスペルガー症候群の人々の様子が紹介されています。記事中ではアスペルガー症候群の人々が「アスピーズ(aspies)」と呼ばれていました。

以下のページで、翻訳された全文を読むことができます。

IT業界で闘う“アスピーズ”
アスペルガー症候群を抱えたITプロたちの“苦悩”と“現状”

http://www.computerworld.jp/news/trd/111349.html

最初の方は一般的なアスペルガー症候群の説明や事例が多いですが、後半は米国の職場で陰ながら行われている取り組みなんかにも触れてあり、興味深いです。以下、8ページ目の文章を一部引用します。

アスピーズが切望するよりよい職場環境とは

 アスピーズが職場で抱えている「社会的相互交渉が困難」という課題は、先進的な人事部門でさえ理解できないほど微妙なことなのかもしれない。しかし、だからといって、アスピーズの支援に消極的であることを正当化する理由にはならない。専門家は、「アスピーズに配慮した環境作りといっても、大がかりなものである必要はない。また、“アスピーズに特化した”と考える必要もない」とアドバイスする。

 Grandin氏らは、オフィス環境に物理的な工夫をするのも1つの施策だと指摘する。多くのアスピーズは、照明の明滅、エアコンやコピー機の動作音、電話の呼び出し音を不快に感じている。オフィス内でのちょっとしたしゃべり声すら苦手だという場合も多い。そういった音のしない空間を確保したり、防音設備を整えたり、あるいはホワイト・ノイズを流したりすれば、オフィス環境は改善できる。

 また公式には発表されていないが、Microsoftはアスピーズ支援のために「バディ制度」導入しているという。これは定型発達者(非自閉症者)とアスピーズとがペアを組み、会議などの社会的相互交渉の必要性を教える制度だ。多くのアスピーズはこの制度を「実際に行われているのであれば、評価できる」としている。


バディ制度には私も賛同します。現実的には運用段階で難しい点も出てくると思いますが、こうしたことをすぐに実践できるような職場環境であることが、すでに望ましい環境だと思いました。

さらに途中には「In My Language」というYouTubeの動画も紹介されています。これは自閉症者の世界観を、A・バックスという当事者が語る(言葉を地声ではなく、音声エンジンで発話させているところがまた面白い)動画です。私にはとても芸術性の高い映画のように感じられました。

2008年6月2日月曜日

注意の障害のある子どもを支援する

こちらもすでに既刊となっていますが,月刊実践障害児教育の6月号では,「注意の障害」に焦点を当てて,テクノロジーによる支援の方法をいくつか紹介しています.

基本的には,「プレゼンテーションツールの活用で注目をうながす方法」と「過剰な刺激を制限するグッズで落ち着きを助ける方法」を中心に紹介しています.

ADHDの障害特性はこうだから,とか,発達障害の障害種別にはこだわらずに,授業場面で注意に困難を抱える子どもたちがどんなことで困っているか,またそれをサポートするためにはどうする?という視点でまとめています.

実践コーナーでは,マイクロソフト社のパワーポイントを使って,実際に注目を促す教材を作る方法を紹介しています(サンプルデータも配布しています).

良かったら手に取ってみてください.

読み書きに障害のある子どもを支援する

月刊 実践障害児教育」という雑誌で,発達障害のある子どもをテクノロジーで支援する方法についての連載をしています.

「テクノロジーで支援する発達障害のある子の困り感」という連載タイトルで,4月号から7回ものの連載です.初回の4月号は中邑賢龍先生(東京大学先端科学技術研究センター)に総括的なレビューをいただき,5月号からバトンタッチして私が各論的なお話しをしています.

コンセプトは「すぐに試せる」ということなので,あまり難しいテクノロジーの話に傾きすぎずに,無料で,すぐに実践してみることができるものを紹介しています.

5月号は,「読み書きに障害のある子どもを支援する」というタイトルで,読みを楽にする読み上げソフトや音声図書,文字入力を楽にする推測入力や,ICレコーダの活用などの紹介をしました.

記事中の体験コーナーでは,「Natural Reader」という,無料で試せる読み上げソフトと,HOYA社製の高性能な音声合成エンジンの体験方法を説明しました.
(この音声エンジンには何種類もラインナップがあり,おすすめはMisakiという音声エンジンです.でもこの夏,あたらしいHarukaという音声エンジンが登場するそうで,とても楽しみにしています.)

書店や図書館で読んでいただけたら嬉しいです.