2009年4月10日金曜日

ブログの移転

新年度を契機に,ブログを移転しました。

CogDiv+ 〜障害のある人のための,生活を楽しくするアイデア集〜
http://cogdiv.wordpress.com/

発達障害だけに限定しない話題になってきているので,タイトルも変更しました。

過去の記事もすべて移転してします。

今後ともどうぞよろしくお願いします。

2009年3月28日土曜日

Microsft PowerPoint® 向けの文字教材サイトをオープンしました

「特別支援教育でのPowerPoint活用」というWebサイトを公開しました。

特別支援教育でのPowerPoint活用
http://www.microsoft.com/japan/enable/ppt/

このサイトでは,マイクロソフト社のプレゼンテーションソフトPowerPoint(パワーポイント)で作成した,授業などで使えるスライドの例を,その作成方法とともに紹介しています。

また,(これが個人的には目玉だと思っているのですが)小学校で学習するひらがな,カタカナ,数字,漢字のすべての文字を一画ごとに独立したパーツの組み合わせで構成したスライドを無償でダウンロードできます。長音符や小文字も含めて,1,182文字すべてをスライドとして用意しました。加工も自由にしていただけます。活用法方法も紹介しています。

この文字教材は口頭で説明するのが難しいので,ビデオを作ってみました。以下のような活用が可能です。このビデオはパワーポイントのプレゼンテーションを録画したもので,この教材を私が組み合わせて作成したものですので,同じようなものを作ることも可能です。





1年半くらい前に思いついて,公開までマイクロソフトさんを始め,いろいろな方々のご協力をいただいて,ずいぶんと時間がかかってしまいましたが,無事公開の運びとなりました。ご協力いただいた方々には,本当に感謝です。ありがとうございます。

障害のある子どもたちの学習場面ではもちろん,文字に関わる活動のいろいろなシーンで活用できると思います。すでにディスレクシアなどの困難のある子どもたちの学習場面で使ってみていただいた先生方から,子どもたちの嬉しいコメントをいただいています。

あっと驚く活用アイデアを思いつかれた方,ぜひ,教えてください。今後も,ウェブサイトや勉強会などでパワーポイントを活用したアイデアを共有していきたいと思います。

2009年3月26日木曜日

メールなど画面内容をすべて読み上げてくれる携帯電話

視覚障害者の世界では誰もが知っていることになってきていますが,読み書き障害の世界ではあまり知られていないかもしれないと思い,テキスト読み上げ機能のある携帯電話のご紹介です。

ドコモから発売されている「らくらくホン」シリーズには,すべての機種に読み上げ機能が標準搭載されています。文字が読めなくても,携帯電話がメールや画面の操作項目などを,すべて音声で読み上げてくれます。

視覚障害者向け,として開発された携帯電話ですが,ディスレクシアなど読みに困難のある人々にとって役立つものです。

それから「詳細読み」といって,文字入力をするときに例えば「発達」と入力したとき,「はったつのハツ,そくたつのタツ」と読み上げて,漢字が正しいかどうかの手がかりを示すといった機能もあります。

ドコモのらくらくホンのサイトは以下にあります。らくらくホンシリーズには高機能なものから簡易版までいくつものラインナップがありますが,すべてに読み上げ機能があります。

NTTドコモ:らくらくホン
http://www.nttdocomo.co.jp/product/foma/easy_phone/


以下の総務省のサイト(NICT内,情報バリアフリーのための情報提供サイト)には,らくらくホンの解説記事が掲載されていますので参考にしてみてください。

「らくらくホン」は、音声読み上げ機能がついたユニバーサルデザインの携帯電話です
http://barrierfree.nict.go.jp/topic/service/20090309/


初期のころはメール作成時の文字は読めなかったり、メニューも一部だったりというスモールスタートでした。今では画面や、iモードの中に表示されるインターネットのコンテンツも読み上げますし、メール作成などの文字入力の時には漢字変換の詳細読みの対応もしています。毎回、視覚に障がいをお持ちのお客さまからいただいた要望をなるべく反映させていただく形で、少しずつですが機能の改善を進めて今に至っています。

http://barrierfree.nict.go.jp/topic/service/20090309/page3.html



読み書き障害のある人で,試してみた方はご意見聞かせてくださいね。

2009年3月24日火曜日

教科書バリアフリー法Q&A:読み書きに困難のある児童生徒の教科書へのアクセスを支援する

読書が好きな人であれば、書店で自由に好きな本を選んで購入することもできますし,図書館で本を借りて読書を楽しむこともできます。いずれにしても,たくさんの本のタイトルを見て回るうちに、ふと惹きつけれられる本に出会い,その読書を通じて自分の知らなかった世界の知識や経験,考え方に出会うことは、人生において本当に楽しく,かけがえのないことであると思います。

ところが,文字の読みに困難のある人の場合,このように書籍を読んで楽しむ,という活動が制限されています。

何らかの障害のために,読みに困難のある児童生徒が書籍にアクセスするためには,フォントの変更やフォントサイズの拡大,録音図書の作成,読み上げソフトウェアの利用などなど,障害の状態に合わせて多様な方法があります。しかしこれらの方法を実現するためには,まず何らかの形で,編集可能な書籍データ(テキストデータまたは図表の画像データ)を入手することが必須となります。

この,書籍データ入手についてですが,現在のところ以下のような方法が代表的と思われます。

・自ら手作業でスキャンまたはOCRしたデジタルデータを使う

・書籍を購入した上で,出版社に自分で問い合わせてデジタルデータを提供してもらう

・視覚障害者のみ登録可能な「ないーぶネット( https://www.naiiv.gr.jp/ )」に登録し点字データを利用する

・視覚障害者のみ登録可能な「びぶりおネット( http://www.nittento.or.jp/ROKUON/haisin.htm )」に登録し録音図書を利用する

・全国の図書館ごとに保有していることがある障害のある人が利用可能な録音図書を利用する(視覚障害のみ使える場合が主で,発達障害や肢体不自由などその他の障害での利用ができるところはまれ。大阪府立図書館は多様な障害者が利用するための録音図書コンテンツが豊富で有名)

・青空文庫( http://www.aozora.gr.jp/ )などの著作権切れ書籍データ・アーカイブを利用する

・商用の書籍データ販売サービスや,もともと録音図書として販売されている音声データを利用する

しかし一般の書籍で,一部アクセシビリティが確保されたものだけに限らず,勉強に関して必要な,教科書のデータについてはどうしたらいいか?という問題があります。それに関して,昨年「教科書バリアフリー法」という法律ができ,来年度からの適用開始を機に,少しずつ環境が整い始めています。

以下に,この法律に基づいて,障害のある子どものために教科書のデータを入手する上での疑問点とその回答を書いてみました。この内容については,私が種々の情報源から判断して書いたものですので,誤解も含まれているかもしれません。その場合はコメントいただけましたら幸いです。(また,このQ&Aの内容チェックには,この文末にもリンクしている筑波盲学校の宇野和博先生にもご意見いただきました。ありがとうございます!)


Q1. 教科書バリアフリー法とは何ですか?

A1. 視覚障害などが原因で,学校で使用されている通常の教科書の使用が難しい生徒のために,教科書出版社に対して,「文部科学省へのデジタルデータの提供」と「文部科学省が定める標準規格に基づく拡大教科書の発行の努力義務」が法律で決められました。それが「教科書バリアフリー法」です(2008年6月10日成立『障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律』)。

これまで,障害のある生徒に合わせた教科書を作成するためには,ボランティア団体などが,通常の教科書を手作業でスキャン・OCRして,または手入力でテキストを入力して,地域や学校ごとに特別な教科書(例:弱視の生徒向けの拡大教科書,読み書き障害のある生徒のための録音図書)を作っていました。この種の作業には,多大な労力とコストが掛かります。結果として,障害のある子どもたちには使える教科書が非常に得にくい,という状況を生んでいました。拡大教科書については数社から発行されてはいましたが,種類は少なく,とても十分とは言える状況ではありませんでした。

教科書バリアフリー法により,拡大教科書や点字教科書については,ボランティアが製作しなくても,教科書出版社から直接発行される可能性が生まれました。(点字については盲学校では既に出版社が発行しているそうです。)また,スキャンなどの手間を掛けなくても,出版社から提供されたデジタルデータをボランティア団体などの元に届けることができるようになりました。


Q2. いつから教科書バリアフリー法は適用されますか?

A2. 2009年4月の教科書から適用されます。


Q3. この法律は,拡大教科書や点字教科書,録音図書を作るためにしか適用されないのですか?PDFをそのまま,読み上げソフトやパソコンでの表示のために使用することはできませんか?

A3. 端的に言えば,ややグレーですがおそらく可能と思われます。もともとはPDFデータから拡大教科書や点字教科書,録音図書などいくつかの「特製の」教科書を作ることを想定した法律です。なので,データそのものを配布して,それを障害のある子どもが使用する,ということはあまり想定されていないようです。

教科書バリアフリー法は,もともとは視覚障害のある子どもための拡大教科書発行を教科書会社に義務づけることを目指す運動の中から生まれた法律です。しかし,その法律立案の過程で,視覚障害に対する限定は外されています(各所に「児童及び生徒が障害その他の特性の有無にかかわらず」という記述が見られます)。さらに,教科書出版社からのデジタルデータ(電磁的記録)提供の目的は,以下の第五条にあるように「教科用特定図書等の発行をする者」へデータを届けることと書かれています。ちなみに「教科書用特定図書等」とは,拡大教科書と点字教科書のことです(第二条で定義されています)。

「生徒の学習の用に供するため作成した教材であって検定教科用図書等に代えて使用し得るもの」とあるので,将来的な電子教科書を見据えて,PDFデータそのものを読み上げやパソコン画面での表示に使うなどの拡大解釈ができそうな様子ではあるようです。

法成立の経緯から,教科書バリアフリー法は拡大教科書や点字教科書を作成するための法律,という形になっているようです(教科書用特定図書「等」の解釈は微妙ですが)。しかし,随所に他の障害のある子どもへの配慮も見え隠れします。

まずこの法律の制定に伴い,著作権法も改定されました。障害を問わず,様々な障害のある生徒に教科書を提供するため,自由な方式で複製して良いことになりました。おそらく,読み上げやパソコンでの表示を考えた場合,以下のようなやりとりが生じると思われます。

教科書出版社「拡大教科書か点字教科書作るなら,文科省経由でデータ提供するよ。うちで出版する訳じゃないから,自分で編集して印刷してね。」教師やボランティア団体「ねぇねぇ,このデータ,生徒が読み上げソフトとか使うときにも使って良い?著作権法で障害のある子ども向けに教科書は複製して良いことになってるんだけど,読み上げに使うならまた自分でスキャンしてOCRしなさい,とは言われないよね?」教科書出版社「うーんと,それどうしようか・・・・」

最後の「・・・・」にはどんな回答が入るか,法律上の規定がないのでケースバイケースだと思われます。しかし,教科書バリアフリー法のもととなったともいえる「拡大教科書普及推進会議」の第一次報告では,「音声読み上げのコンピュータソフトを利用した、教科書に準ずる教材を障害のある児童生徒に向けて製作する非営利団体」も「認定ユーザー」として「データ管理機関(明示されていないがおそらく文科省初等中等教育局の関連だろうと思われる)」に登録することで,教科書データを利用可能と記載されています。この規定に準じるなら,事実上利用は可能でしょう。

教科書バリアフリー法と著作権法の改定を併せて考えると,特別支援の現場レベルでは,ディスレクシアや肢体不自由などの障害のある子どもが教科書にアクセスするためのデータの利用(例えば読み上げやパソコン画面での表示)についても,適用可能なケースが生まれるよう,どんどん試してみることが大事と思われます。

また実際に,第七条では,発達障害『等』のある児童生徒に関する調査研究の推進も明言されており,今後の法改正次第では,拡大や点字以外にも,様々な方法の使用を法的にバックアップする方向に動いていくと思われます。


Q4. 小中学校(義務教育)の検定教科書だけしかデータ提供を申請できないのですか?高校生の教科書にも適用されますか?

A4. 検定教科書であれば,小中学校及び高校まで,データ提供を申請可能です。また小中学校だけでは,教科書用特定図書等を作成するためにかかるコストを,国と地方公共団体が負担することになりました(義務教育での教科書無償法に基づく)。そのためデータの提供は義務教育だけに制限されているように思われますが,実際にはそうではありません。予算措置がないだけで,高校であっても検定教科書であればデータ提供を申請することができます。

しかし,拡大教科書普及推進会議の第一次報告に戻ると,拡大教科書に関わるデータの提供は小中学校に限るという記述があり,高校については今後の検討課題として残された問題となっています。しかしながら,教科書バリアフリー法では高校の検定教科書についても,差別無くデータ提供の範疇とするようになっているため,高校の検定教科書についてデータの提供を文科省に申請すれば,データの入手が可能でしょう。その場合,データセンターに高等学校名で登録を行う必要があります。


Q5. 参考書などの副読本にも適用されますか?

A5. 現時点では,検定教科書に限定されています。参考書などの副読本は,学習において非常に重要なものですが,現在のところはこの法律ではサポートされていません。この問題については多くの関係者に認識されています。今後の改正が望まれます(実際のところ,包括的な著作権法の改訂などが進んでいます)。


Q6. 障害のある子どもに合わせた特別な教科書を作る際の予算は補助されますか?

A6. 小中学校では,教科書用特定図書等を作成するための予算は国と地方公共団体により全額補助されます。


Q7. 障害のある子どもに使用するための教科書データの提供は,誰でも申請することができますか?またはどこか問い合わせ窓口がありますか?

A7. 申請は個人ではできません。また,窓口は文科省(データ管理機関内)にあります。教科書バリアフリー法第十六条では,校長や市町村の教育委員会からの拡大教科書の需要報告を,都道府県の教育委員会がとりまとめて文部科学大臣に報告することが定められています。しかしこれは,予算措置の必要な拡大教科書の作成のために必要な手続きと思われます。

実際には,生徒からの支援ニーズに気づいた人(学校の先生など,団体に所属する人)が,データ入手への申請を含め積極的に動く必要があるだろうと思われます。

法律には明記されていませんが,「拡大教科書普及推進会議 第一次報告」には,教科書データを管理するのは「文部科学大臣が指定するデータ管理機関」という記述が見られます。従って文科省がデータを管理すると考えて問題ないと思います。個別の問い合わせは,基本的にこちらに行うことになるでしょう。Q3にも書きましたが,「認定ユーザー」として登録した団体であれば,データ管理機関からデータ提供を受けられるでしょう。また登録を必要としているのは,このデータを不用意に拡散流通させてしまった場合,罰則が適用されるためです。


Q8. データはどのような形で提供されますか?

A8. PDF形式でCD-ROMに保存されたものが提供されることが「拡大教科書普及推進会議 第一次報告」に記載されています。したがって,文字データ及び画像データ,表などすべて,販売されている検定教科書どおりのレイアウトのものが入手可能です。そこから教科書内部のテキストデータや画像データにアクセスすることができます。


Q9. 問い合わせなくても利用可能な教科書データはないのでしょうか?

A9. 三省堂の「聞く教科書シリーズ」は,音声データで販売されています。中学校教科書では英語が,高校教科書では英語,世界史,日本史,政経が販売されています( http://www.sanseido-publ.co.jp/publ/ab/data/lis-text.html )。


<情報源>

障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律
http://law.e-gov.go.jp/announce/H20HO081.html

著作権法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S45/S45HO048.html

拡大教科書普及推進会議(文科省初等中等教育)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/048/index.htm
※ 平成21年2月17日現在,第一次報告が掲載されていませんが,LD親の会のページにPDFが置かれています。
→ 拡大教科書普及推進会議報告 拡大教科書普及推進会議(LDニュース)
http://shibuya.cool.ne.jp/ldnews/pdf/20081205.pdf

教科書のバリアフリー化に向けて一歩前進(障害者放送協議会著作権委員会委員長 井上芳郎氏)
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/access/daisy/event20081101/inoue_text.html

「拡大教科書」に関する現状と今後の課題(筑波大学附属視覚特別支援学校学校 宇野和博氏)
http://www.lv-club.jp/hosyo/kousatu/kadai(081207).html

以上

2009年3月4日水曜日

「読み」に困難のある人のための実態調査・協力募集中

最近,発達障害でも「読み」に困難のある人の支援に関心を持っています。

発達障害で「読みの困難」と言えば「ディスレクシア」と考えてしまいがちですが,アスペルガー症候群の人の中にも,綾屋さん(「発達障害当事者研究」の著者で当事者)のお話しをうかがったり,当事者の方々のお話を伺うと,文字(フォント)や色にこだわりがあったり,視覚的な過敏性があったり,または書籍や雑誌の段組の読み進め方がわかりにくく,混乱したりなどなど,いろいろな理由で読みにくさを感じている人がいることがわかってきました。

また,発達障害全般や認知面に困難のある障害に目を向けると,高次脳機能障害など,読みに困難を生じる障害は,ディスレクシア以外にもたくさんあります。しかしながら,当事者や支援に関わる人以外には,こうした困難さについてはあまり知られていないという現状があります。

そこで現在,これまでは視覚障害の人向けにサービスを提供していたBRC(バリアフリーリソースセンター)という団体が,視覚障害以外の人々で,読みに困難を感じている人の実態を知るための調査を行っています。視覚障害以外での,読みに困難を感じている人への支援の必要性を把握するための調査です。

日頃少しでも,本やウェブ,その他の印刷物などに読みにくさを感じたことがある人は,ぜひ調査に協力していただけるとありがたいです。特に,そうした困難を感じている人がどのような工夫をしながら読んでいるのか,具体的な方法について目を向けた調査であるところが特徴です。


「読み」に困難を感じている人への読書に関するニーズ調査(説明)
http://www.best-npo.com/brc/index2008-2.html

当事者向けアンケートのページに直接飛ぶ場合は,以下のリンクへ
http://www.best-npo.com/brc/2008.html

指導者・支援者向けのアンケートページに直接飛ぶ場合は,以下のリンクへ
http://www.best-npo.com/brc/2008-2.html


関連情報:

綾屋さん&熊谷さんの障害学会での発表要旨
http://www.arsvi.com/2000/0709as.htm

綾屋さん&熊谷さんの上記についての書籍
発達障害当事者研究—ゆっくりていねいにつながりたい (シリーズ ケアをひらく)

2009年3月2日月曜日

イベント情報:読書バリアフリーを考えるシンポジウム

以下のようなイベントがあります。


2010年国民読書年に向けて視覚障害者・高齢者の読書バリアフリーを考えるシンポジウム−読書バリアフリー法の制定を目指して−

 視覚障害者や加齢に伴う低視力化により読書がしづらくなった高齢者のための「読書バリアフリー」を考えるシンポジウムのご案内です。
 国連では2006年12月、「障害者の権利条約」が採択され、我が国でも現在批准に向け国内法の整備が進められているところです。この条約では、合理的な配慮の下、「利用可能な様式を通じて、文化的な作品を享受すること」を確保するためのすべての適当な措置をとることが義務付けられております。
 一方国内では、国民の「活字離れ」が叫ばれて久しくなりますが、国民的な読書活動を推進するために「子ども読書推進法」や「文字・活字文化振興法」が制定されております。また、2008年6月には国会で2010年を「国民読書年」とする決議が全会一致で採択され、国民すべてが更に読書に親しめるような読書環境と読書文化の高揚が期待されているところです。
 このような情勢の中、障害者や高齢者の読書環境を改善するために以下のようなシンポジウムを企画しました。このシンポジウムでは、「読みたくても読めない」という読書困難者が一冊でも多くの本と触れ合えるようにするためにはどうしたらよいか、みんなで知恵を出し合い、出版そのもののバリアフリー化や図書館の障害者・高齢者サービスのあり方を考えていきたいと思います。そして最終的にはこの読書のバリアフリー化が、我が国の知的で活力ある文化の形成や力強い経済活動に貢献するための基礎的な環境整備となることを願っております。多くの方のご参加をお待ちしております。

日 時: 2009年3月21日(土) 13時〜16時30分

場 所: 日本盲人福祉センター (東京都新宿区西早稲田2-18-2 電話 03-3200-0011)

主 催: 日本盲人福祉委員会 文字・活字文化推進機構

後 援: 活字文化議員連盟 全国音訳ボランティアネットワーク 出版UD研究会 バリアフリー資料リソースセンター 弱視者問題研究会

日 程: 13:00〜 開会式

13:10〜 講演1 「視覚障害者の「文字に接する権利」--そのふたつの要素--」 講師:橋本宗明氏(社会福祉法人 ぶどうの木理事)

13:40〜 講演2 「公共図書館における視覚障害者サービスの歩み」 講師:田中章治氏(東京都立中央図書館)

14:10〜 休憩

14:20〜 読書バリアフリー法案提起

14:40〜 パネルディスカッション パネリスト  高橋秀治(ロゴス点字図書館長) 中和正彦(ジャーナリスト) 長岡英司(筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター教授) 藤田晶子(全国音訳ボランティアネットワーク代表) 松井進 (千葉県立中央図書館)

16:20〜 閉会式

参加費: 無料

問い合わせ・申し込み先
バリアフリー資料リソースセンター(BRC)事務局 〒171-0031 東京都豊島区目白3-21-6-101 電話 03-3950-5260 ファックス 03-5988-9161 電子メール info@dokusho.org ※ Eメール、FAX、郵便などでお申し込みください。 ※ 点字,拡大文字,テキストファイルでの資料を 希望される方は申し込みの際にお申し出下さい。



会場までの交通:

JR山手線・西武新宿線で→「高田馬場駅」早稲田口から徒歩15分
早稲田口の改札を出て階段を数段下り、右に曲がって駅の外に出ます。正面の信号を渡って早稲田通りを500メートル程進み、明治通りとの交差点(馬場口交差点)を渡って右に曲がります。100メートル程進み、自転車店と高田馬場アクセスの間の1本目の路地を左に曲がって、100メートル程先の左手にある3階建ての建物です。

地下鉄東西線で→「高田馬場駅」7番出口から徒歩10分
7番出口を出て右に曲がり、早稲田通りを300メートル程進んで、明治通りとの交差点(馬場口交差点)を渡り、右に曲がります。100メートル程進み、自転車店と高田馬場アクセスの間の1本目の路地を左に曲がって、100メートル程先の左手にある3階建ての建物です。

地下鉄副都心線で→「西早稲田駅」ローソン横出口から徒歩3分
ローソン横出口を出て右に曲がり自転車店と高田馬場アクセスの間の1本目の路地を右に曲がって、100メートル程先の左手にある3階建ての建物です。

JR高田馬場駅からバスで→「高田馬場2丁目」バス停から徒歩5分
「高田馬場駅」早稲田口の改札を出て階段を数段下り、右に曲がって駅の外に出ます。2番のバス停から「早大正門行」都バスに乗り、一つめの「高田馬場2丁目」で下車します。駅方向に80メートル程戻り、明治通りと早稲田通りの交差点(馬場口交差点)を左に(早稲田通り側を)渡ります。100メートル程進み、自転車店と高田馬場アクセスの間の1本目の路地を左に曲がって、100メートル程先の左手にある3階建ての建物です。

2009年2月25日水曜日

読み上げ支援:SAPI5に対応したTextToWav

以前,読み上げソフトについての質問あれこれで紹介した「Text To Wav」がバージョンアップして,SAPI5対応になっていました。フリーウェアな上に高機能で,背景の文字を簡単に拡大縮小できたり,背景色を変えたり,読み上げ速度を変更したりといった操作ができます。


読み上げソフト開発と音声学習
http://noah0.blog119.fc2.com/
※上記のブログの左側に,「Download」と書かれたリンクがあり,そちらからTextToWavをダウンロードできます。



上記がTextToWavのスクリーンショットです。

  • 画面左上端「MS UI Gothic」と書かれているフォント名の左隣にあるスライダーを,マウスでドラッグして左右に動かすことで,テキスト領域のフォントサイズを変更できます。
  • 「一時停止(||)」ボタンの左右にある「巻き戻し(<|)」,「早送り(|>)」ボタンを押すと,一文ずつ読み上げする文を先に進めたり,前に戻したりできます。読み上げている文は背景色が変わるので,どこを読み上げているのかわかりやすくていいですね。
    ※Natural Readerでは,読み上げている段落全体の背景色を変え,加えて読み上げている単語近辺の背景色を変えていきます。この辺りの微妙な仕様の違いが,TextToWavとNatural Readerのどちらを使うか好みの分かれるところでしょう。
  • 画面右上部の「Rate」の右隣のスライダーを左右に動かすことで,読み上げの速度を変更することができます。MISAKIだと15倍まで加速できますが,ここまでくるともう何をしゃべってくれているのかさっぱりわかりません(^^;)。

    作者のNoahさん,このような有用なソフトを公開してくださり,ありがとうございます。
  • 2009年1月26日月曜日

    オバマ政権での自閉症者施策について

    ホワイトハウスの施策公開ページである「THE AGENDA http://www.whitehouse.gov/agenda/disabilities/」に,オバマ政権での障害者施策について書かれていましたが,後半の半分ほどが自閉症のある人への施策に触れられていたので訳出してみました。

    自閉症対策法をベースにした大規模スクリーニング実施とそれに基づく対策の立案・実施へ向けた動きが本格的に始まるということのようです。


    <以下訳>

    自閉症について

    Obama大統領とBiden副大統領は,自閉症スペクトラム障害(ASD)のあるアメリカ人,その家族,そしてそのコミュニティを支援する。その支援には,以下のように,いくつかの鍵となる要素がある。

    *第一に,Obama大統領とBiden副大統領は,自閉症に関する研究,処置,スクリーニング,国民の認識,支援サービスへの資金拠出の増加を支持する。
    *第二に,Obama大統領とBiden副大統領は,ASDのある人々への生涯を通じたサービスおよび,ASDのある成人と子ども両者への介入とサービスの改善を支持する。
    *第三に,Obama大統領とBiden副大統領は,自閉症対策法(Combating Autism Act)と,政府と州のASDに対するプログラムをどのように改善していくかを決定するため,議会,親,ASD専門家の作業への資金拠出を支持する。
    *第四に,Obama大統領とBiden副大統領は,全ての乳児の全数スクリーニングと,ASDを含むいくつかの兆候が現れ始める年齢である二歳児の段階での再スクリーニング実施を支持する。これらのスクリーニングは安全で安全かつ確実なものとなり,スクリーニングを望む全てのアメリカ人が利用できるものとなる。スクリーニングは,必要な支援やサービスを得るために十分に早い段階で障害を同定する上で,子どもや家族にとって不可欠なものである。


    Autism



    President Obama and Vice President Biden are committed to supporting Americans with Autism Spectrum Disorders ("ASD"), their families, and their communities. There are a few key elements to their support, which are as follows:



    * First, President Obama and Vice President Biden support increased funding for autism research, treatment, screenings, public awareness, and support services. There must be research of the treatments for, and the causes of, ASD.

    * Second, President Obama and Vice President Biden support improving life-long services for people with ASD for treatments, interventions and services for both children and adults with ASD.

    * Third, President Obama and Vice President Biden support funding the Combating Autism Act and working with Congress, parents and ASD experts to determine how to further improve federal and state programs for ASD.

    * Fourth, President Obama and Vice President Biden support universal screening of all infants and re-screening for all two-year-olds, the age at which some conditions, including ASD, begin to appear. These screenings will be safe and secure, and available for every American that wants them. Screening is essential so that disabilities can be identified early enough for those children and families to get the supports and services they need.

    2009年1月19日月曜日

    スウェーデン企業・「2万人の障害者集団」サムハル

    2万人の障害者を雇用するスウェーデンの国策巨大企業「サムハル」の記事が日経ビジネスに掲載されていました(日経ビジネスは閲覧に無料のユーザ登録が必要でした)。


    働きたい者には等しく機会を与える
    “障害者集団”、スウェーデン・サムハルの驚愕(1)
    http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20090114/182649/

    厳しい数値目標が国営企業を鍛えた
    “障害者集団”、スウェーデン・サムハルの驚愕(2)
    http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20090115/182792/

    弱者を変えた冷徹な合理性
    “障害者団体”、スウェーデン・サムハルの驚愕(3)
    http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20090119/183071/


    記事にはサムハルはかつての製造業メインからサービス業メインへの移行で,ある程度,臨機応変に対応できる障害者を重視しているといった記載がありました。となるとそうした対応が苦手とされる自閉症スペクトラムの当事者達にはどのように対応しているのかなど,気になっています。

    とはいえサムハルには,障害が軽くて働ける人を優先的に雇用するのではなく,雇用が難しい人から優先的に働けるように,という原則があるようです。これは株主である国が毎年数値目標を設定していてコントロールしているとか。

    それぞれの障害者の特性を把握して,グループで組み合わせて仕事に当たることができるようにするとか,精神障害の人がリハビリ的に仕事をする環境を作るとか,ちょうど私たちも内輪で議論していたようなトピックが書かれていたこともあり,何かの機会にストックホルムにお話しを伺いに行ってみたいと思っています。なんといっても「2万人」というインパクトがすごい。


    関連情報


    日本の皆様へ サムハルAB 代表取締役 イェルハルド・ラーション(他)
    http://www.prop.or.jp/flanker/20/20samu.html

     大阪のプロップステーションのサイトに,1998年12月と古いものですが,サムハルグループの代表と日本代表の方の挨拶が掲載されていました。日本代表事務所は検索しましたが,ウェブでは情報が見つけられませんでした。


    身体障害者の就労状況:その1: SAMHALL( サムハル)の現状:
    http://fukushi-sweden.net/welfare/handikapp/2008/samhall.l0802.html

     上記のページは,スウェーデンにお住まいの社会福祉士の方のサイトのようです。掲示板の前書きに,スウェーデンが福祉国家として日本から神格化されているが,スウェーデン国内では福祉と教育が民営化されたことを端緒とする問題や批判が大きいこと,さらにその背景にEU連合へ支払う莫大な会費による国家財源の圧迫があることなどが書かれていて興味深いです。日本が偏重する「スウェーデン福祉神話」という指摘はなるほどと思います。


    2004年度サムハル社(スウェーデン)年次報告書
    http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/resource/ld/samhall2004/business.html


     DINFにサムハルの2004年の年次報告書と題された短いレポートが掲載されています。DINFでは知的障害のカテゴリに分類されていますね。日経の記事を読むと,多様な障害を対象としていると書かれていますから,ちょっと分類が誤解を招くかもですね。それともやはり知的障害者の雇用がメインなのでしょうか。

    2009年1月5日月曜日

    予定の見通しを付けるのが難しいときには?

    新年最初なので,シンプルな予定表を皆さんにお届けします。

    元は私自身が自分のために作って使っていた予定表ですが,シンプルに誰もが使えるように改変してみました。

    <予定表をダウンロードする(PDF形式,192kB)> ←右クリックして「ファイル名を付けて保存」してください。



    上記の画像のように,A4一枚で一週間の予定が書き込めるようになっています。曜日は月曜から日曜までをすでに入力してありますが,年月日は空欄なので,自由に記入して使ってみてください。

    私のおすすめの使い方を書いておきます。

    予定と実際を両方書く

    一日の予定の半分あたりまで,30分刻みの点線が入っています。このあたりを利用して将来の予定を書き込み,残りの左半分に「実際にはどのような時間の使い方をしたか」を書き込みます。

    予定を記入する手帳はよくありますが,この予定表は重点は,この「どのような時間の使い方をしたかを書き込む」ところにあります。

    例えば以下のような書き方をします。



    上記の予定表では,一週間が一覧できます。これを使って一週間の見通しを良くしてあげることで,予定の把握や見通しに伴う困難(例えば以下のようなこと)を軽くすることを目指したものです。

    □ 予定を立てる際,その前後に必要となる準備や片付けなど「予定そのもの以外に必要となる時間」を,あらかじめ見積もることをつい忘れてしまう。  → 予定だけではなく,24時間全ての時間軸が書き込んであるので,そこに準備と片付け,移動の時間を書き込むクセをつける助けになります。

    □ ある予定を終わらせるのに,いつもかかっている時間を忘れて,かかる時間を過小評価(または過大評価)してしまう。  → しばらく継続して記録を付けていると,何かの作業に自分がどれくらいの時間が必要なのか,過去の記録を参考にして判断する材料がたまってきます。

    □ すでに今週,沢山の予定が入っているにもかかわらず,つい空いた時間にどんどんと予定を入れてしまう。  → 24時間の時間の量が一目でわかるので,予定が詰まりすぎていて,十分な休息の時間が取れていない日も目視でわかります。

    □ 先週何をしたのか覚えていない。  → 先週何をしたかは先週の予定表に書かれています。紙がたまっていくと,自分が何をしていたのかを見直すことが楽しくなってきます。

    □ 24時間表記の予定表なので,睡眠時間や移動時間,余暇の時間など,通常の予定表では把握しにくい時間の使い方も把握できる。  → 特に,睡眠時間や休憩時間が十分取れているかを見直すことに使ってみましょう。十分取れているのに疲れが取れない場合は,過去の行動を見直して,もう少し休息を長く取ったほうが疲れにくいか?または何か疲れにつながる原因があるか?を判断する材料にしてみては。

    ・・・などなど。

    このような困難さがあるために,毎日なぜかわからないのだが疲れ切ってしまって,ある日突然,電池が切れたように倒れてしまう,という人がいらっしゃいます。

    そんな方は,この予定表を使って「自分観察日記」をつけてみてはいかがでしょうか。


    予定の種別で色分けする

    実際の時間の使い方を書き込む際には,「仕事に関する作業」「趣味の作業」「その他」など,使った時間の長さを示す縦線を書き込むときに,ざっくりと簡単に色分けして書いておくと,あとから見直すときにわかりやすくなります。


    時間に関係のないTODOや目標は左の空欄に書く

    今週やっておく必要のあることなどは,一番左の空欄に書き込んでおき,終わったものは横線で消すようにすると,やるべきことの状況が把握できて便利です。


    注意点

    書き込む際にこだわりすぎない! あくまでも,使った時間の内容を書き込む際には「ざっくりと」書き込むようにしましょう。分単位,秒単位で精確に描き込むことにこだわると,破綻します。長続きしないどころか,かえって疲れ切る原因を増やしてしまいます。

    それが難しい場合は,30分ごとの区切り線を消して,もっとざっくりした予定表を作って使ってみるのもいいかもしれません。

    精神的にひどく参っているときには使わないことも重要です。

    または,ネガティブな気分が続いているときには,うまくポジティブな時間管理に向かうようアドバイスしてくれるような人と一緒に使ってみるものいいかもしれません。

    以上,関心のある人は使ってみて,また感想を教えてもらえると嬉しいです。

    明けましておめでとうございます

    明けましておめでとうございます。
    本年もどうぞよろしくお願いします。
    皆様にとって良い年となりますことを祈念しております。

    今年はもうちょっとまめに更新できるようにしたいと思います!