2008年7月8日火曜日

読み上げソフトについての質問あれこれ

今回は、読み上げソフトをいくつか紹介する中で、Windows環境で読み上げソフトを使う上でわかりにくい点をまとめてみます。(以前「実践障害児教育」に掲載した「読み書きの困難を支援する」の記事について、さらに進んだ説明でもあります。)

Q. 読み上げソフトにはどんなものがあるの?

 海外のものも含めて、沢山のソフトが公開されていますが、私が実際に使ってみたり、紹介してもらったりして、読みに困難のある子どもたちに便利だと思った3つのソフトを紹介します。

読み上げソフトとは、実際には「音声エンジン」と、その音声エンジンをコントロールしたり、文字の表示をいろいろと工夫してくれたりする「読み上げソフト」の組み合わせから成っています。音声品質としておすすめは1番目の組み合わせですが、音声品質は劣るとはいえ、読み上げを無料ですぐに試すには3番目の組み合わせを試してみてください。


1) Natural Reader ←個人的なおすすめ

入手先:http://www.naturalreaders.com/



長所

  1. ハイライト表示機能がある。読み上げている場所、読み上げている単語を、背景と文字の色を変えて表示(ハイライト表示)してくれる。そのため、文章のどこを読み上げているのかがわかりやすい。
  2. 操作がシンプルでわかりやすい。基本的に画面に表示されているのは、再生・停止ボタンと速度調整(Speed)、音声エンジン選択(Speeker)だけで、それだけ操作できればよい、という割り切ったシンプルさ。
  3. 表示するフォント、文字の大きさも変更できるので、極端に大きな文字にして見やすくするなどの工夫もできる(メニューの「Control」→「Sttings」→「Font」タブ→「Change Font」ボタンを押す)。
  4. 有償だが、SAPI5に対応する日本語エンジン(説明は後述)の中には、非常に流ちょうに日本語や英語を読み上げるものが登場している。
  5. 無料であること。


短所

  1. 英語の音声エンジンは(あまり流ちょうとはいえないが)付属しているものの、日本語の音声エンジンを別途インストールしないと、日本語読み上げには使用することができない。
    → 日本語の音声エンジンは、「SAPI 5」に対応した音声エンジンが必要。この説明は後述します。

  2. 海外製品なので、ダウンロードして入手するとき、インストールするとき、画面のメニュー、設定画面などが英語。
    →実際には画面の指示に従えばインストールもできますし、操作も、読み上げたい文書を貼り付けて、再生・停止ボタンを押すだけなのですが、やはりメニューなどが英語だと敬遠されがちです。




2) MO Speech

入手先:http://www.laboreconomics.org/



長所

  1. 操作が極めてシンプル。とにかく読み上げたい文字列の範囲を選択してコピーすると即座に読み上げ。
  2. 無料であること。


短所

  1. 読み上げエンジンは全く付属していないので、自分でSAPI5に対応した音声エンジンを導入する必要がある。



3) Text to Wav

入手先:http://noah0.blog119.fc2.com/
※Special thanks to TK先生・・・このソフトを教えていただきました。ありがとうございますm(_ _)m




長所

  1. 多機能。句点ごとに一文ずつ読み上げてくれたり、画面の文字サイズをつまみを調節するだけで拡大縮小できたり、背景やフォントの色をボタンひとつで好みのものに変えたり、読み上げた音声をMP3(音声ファイル)に出力できたり、のように多彩な機能がある。
  2. 対応する日本語音声エンジンを、無償で手に入れることができる。とにかく読み上げソフトを使ってみたいならまずはこのソフトを使うべし。
  3. 作者の方が日本人なので、ネット上に日本語の説明書がある。
  4. 無料である。


短所

  1. 読み上げエンジンは付属していないので、自分で「SAPI4」に対応した音声エンジンを導入する必要がある。
  2. SAPI4の日本語や英語の音声エンジンには、あまり流ちょうに読み上げるものがないので、読み上げ音声の品質は良いとはいえない。
    ※作者のNoahさんがSAPI5対応をTODOに挙げておられます。とても素晴らしいソフトなので、SAPI5対応を首をなが〜くしてお待ちしております!

  3. メニューなどが英語表記。



Q. 日本語音声エンジンの入手方法は?

日本語音声エンジンを使う、とひとことで言っても、SAPI(Speech API:Windows上で動くソフトウェアに読み上げ機能を提供する仕組み。音声エンジンもこれに含まれる)のバージョンによって、いくぶん違いがあります。

このSAPIには、大きく分けてバージョン「4」と「5」が」あります。

SAPI5対応の音声エンジンを手に入れる

最近のWindows用のソフトウェアで使われている音声エンジンは、基本的にこちらのバージョンのものになります。今回紹介したソフトの中では、Natural ReaderとMO SpheechはSAPI5に対応した音声エンジンが必要です。

日本語でSAPI5に対応した音声エンジンを入手するためには、Microsoft Office 2003に付属の読み上げ機能をインストールするか、市販の日本語対応音声エンジンを入手してインストールする必要があります。(編注:XP→2003に改めました。しかしながら、この辺ちょっとよく把握していません。XPにはSAPI4の日本語音声エンジンが付属していて、2003にはSAPI5だったかもしれません。どちらも手元になく確認ができませんでした。)

市販のものでは、例えば、XP Navo(ナレッジクリエーション社製)を購入して、これに付属しているSAPI5対応の音声エンジンを導入すると良いでしょう。このXP Navoには、個人的におすすめの音声エンジン「Misaki(日本語、女性)」のほか、「Show(日本語、男性)」「Miyu(日本語、女性)」「Kate(英語、女性)」の4つ(いずれもペンタックス製の音声エンジン)が含まれています。

ペンタックスの音声エンジンは、http://voice.pentax.jp/でデモンストレーションを試してみることができます。驚くほど読み上げ品質が高い日本語音声エンジンです。Misakiの音声は私の周りにいるユーザの間でも人気です。私もお気に入りだったりします。

SAPI4の音声エンジンを手に入れる

ちょっと古いバージョンなのですが、SAPI4に対応した日本語音声エンジンは、ウェブ上でダウンロードして入手することができます。さらに、前述した高機能な読み上げソフトウェア「Text to Wav」はSAPI4にのみ、対応しています。このソフトを使おうと思ったときには、SAPI4の音声エンジンを入手しておく必要があります。

この入手方法についても、Text to Wavのページで詳細に説明してあります。http://noah.ninja-web.net/soft/texttowav.htmlを開き、左のメニューにある「FAQ」をクリックしてください。その一番上、「起動時にエラーメッセージが表示されて終了してしまいました。」をクリックすると、SAPI4の入手とインストール方法が説明してあります。


(以上)