2008年1月30日水曜日

考えがうまくまとまらないときには?(feat. 学校や職場で使える多彩な用紙フォーマットを入手する方法)

自分が何を考えているのか,自分自身でもよくわからない.困りごとについて考えをまとめようにも,どうもうまくまとまらない.そんな人のために,様々な「考えをまとめる・把握しやすくする」ための方法は世の中にたくさんあります.最近有名な「マインドマップ」や,伝統的な「KJ法」,「アウトライン化」など様々な方法があります(これらの方法についてはまた後日,関係するツールを説明します).

これらの方法はいずれにせよ,頭の中で考えていることを,とにかく図に書いて頭の中から外へ取りだし,把握しやすくする,という方法です.「手書き式コミュニケーションで相互理解を促進」の回でも書きましたが,誰かとコミュニケーションするときに,自分の考えや相手の考えを,言葉だけでなく図式化して見せ合うことはとても重要です.そして「自分自身との対話」でもある「考え事」のときにも,この方法を使わない手はありません.慣れない最初のうちは面倒ですが,とにかく下手でも何でも良いので,図に描く癖をつけていると,頭の中で混乱していることが随分すっきりしてきます.

気になることがいくつもあって,なんだか不安だ・・・と夜も眠れなくなることがありませんか?不安が高まって,やらなきゃいけないことがあるのになかなか手をつけられなかったり,つい避けてしまうことは?そんなときにも,図式化は便利な方法です.よく私は「心配事3つの法則」と言っているのですが,心配事や気になっていることを私たちが頭の中だけで上手に把握できるのはせいぜい3つ,いや2つ程度まで.2つくらいまでだと「あれと,あれが大変だから自分は今,ちょっとつらいんだ」と判断できます.ところが心配や不安がそれ以上に増えると,もうどれがどう関係し合っているのかよくわからなくなり,漠然と「人生全体がつらい」という悲観的な状況になってしまうことがあるようです.

ところが,「書き出す」という作業を行うと状況が少し変わってきます.「やるべきことをいつも忘れてしまう!を解決する」の回で,「やることリスト」を作るツールをご紹介しましたが,リストに書き出すだけでも,自分が抱えている気になること(=やらなきゃいけないこと)が把握できて,安心につながり,ずいぶん心が楽になります.「やることを山のように抱えて大変だ,と思っていたが,書き出してみるとそうたくさんでもなかった」と感じられる場合もあります.そこに気になることを図式化して理解する方法を組み合わせるとさらに良い,というわけです.

※ただし,抑うつ状態で気分がひどく落ち込んでいるときに図式化を行うのは要注意です.ひどく疲れてしまったり,ネガティブな感情が強く出て,図式自体が非常にネガティブな関係性を表したものになってしまい,さらに気分を落ち込ませてしまうかもしれません.気分が落ち込んでいるときや落ち込みがちなときには,誰か信頼の置ける人と一緒に相談しながら,というのがオススメです.

さて,以下のページは,そんな図式化をするときに便利な,様々なグリッド線の引かれた用紙を自動的に作ってくれるサイトです.英語のページですが,自分が欲しいと思うグリッドの引かれた紙の画像をクリックすると,用紙の設定画面が表示され,そこで選んだ好みの用紙設定で,PDFファイルをダウンロードすることができます.わざわざ専用の用紙を買わなくても,(プリンタは必要ですが)自分で印刷した好みのフォーマットの紙を使って,メモや描画ができます.

「方眼紙(Multi-Width)」を例にとって説明します.トップページにある方眼紙の画像をクリックして表示された画面で,用紙サイズ(PDF Document Size)や余白(Minimum Border),グリッドの太さ(Grid Line Weigh),グリッドの幅(Grid Spacing),グリッドの色(Grid Color)を設定することができます.おっと,標準ではサイズの単位が「インチ」になっているので,設定画面一番上の方にある選択肢(Set document units to: Inches or Centimeters)から「センチメートル(Centimeters)」をクリックして,単位をセンチにしておいてください.最後に,「ダウンロード(Download)」ボタンを押せば,設定済みのPDFファイルをダウンロードすることができます.

Free Online Graph Paper / Grid Paper PDFs
incompetech.com/graphpaper




上記のページには,方眼紙以外にも非常に多彩な用紙をダウンロードできるので,図式化はもちろん,職場や学校でも便利に使えますね.以下にどのような用紙があるかを挙げておきます.


グラフ用紙・方眼紙(Square Graph Papers)
・Graph Paper
・Multi-Width
・Dots
・Cross Grid
・Light Verticals
・Axonometric Perspective

グラフ用紙・多角形(Triangle / Rhombus / Hexagonal)
・Equilateral Triangle
・Octagonal
・Hexagonal
・Hex Dot
・Semi-bisected Trapezoid
・Iso-Dots
・Tumbling Block - Trapezoid
・Diamond - Trapezoid
・Equilateral Triangle Dots
・Variable Triangle

グラフ用紙・円形(Circular)
・Circular - Hex Pattern

グラフ用紙・非対称図形(Asymmetric)
・Asymmetric
・Asymmetric Graph Paper Generator
・Brick Layout
・Brick Graph Paper Generator
・Moorish Pattern
・"174 Paper"
・"Engineer's Paper"

専門家向け(Specialty)
・出納帳(Accounting - Ledger Paper)
・Log/Semi-Log
・Polar Graph Paper
・ストーリーボード(Storyboards)
・五線紙(Music Notation Staves)
・ギターやベースのタブ譜(Guitar / Bass Fretboard Diagrams)
・数直線(Number Line Paper)
・Celtic Knot / Celtic Knotwork Graph Paper
・透視図法(Perspective)

ノート・テイキング(Writing / Penmanship / Note-Taking)
・Lined Paper
・Writing and Penmanship Paper
・Double Lined Writing and Penmanship Paper
・コーネル方式:ライン(Cornell Lined)
・コーネル方式:グラフ用紙(Cornell Graph)
・コーネル方式:音楽(Cornell Music)
・漢字筆記用紙1(Chinese Character Guide Paper - Hex Style)
・漢字筆記用紙2(Chinese Character Guide Paper - Hash Style)
・漢字筆記用紙3(Chinese Character Guide Paper - X Style)
・Calligraphy Guideline Paper
・漢字練習帳(Japanese/Chinese Character Guide Paper)

2008年1月19日土曜日

音や騒がしさに対して敏感過ぎて辛いときには?

聴覚性の感覚過敏,作業への集中困難を感じたことがありませんか?

発達障害,特に自閉症スペクトラム障害には,聴覚や視覚,触覚など,感覚に過敏症がある人がいます。聴覚過敏はよく知られている困難さで,騒がしい場所や突発的な音,または特定の音の種類(赤ちゃんの泣き声,金属音など人によって様々)などに対して強い不快・ストレスを感じることがあります。強い過敏性のある人では,作業への集中が難しくなったり,重い場合は騒音のある場所への外出が困難になる場合もあります。そうした聴覚の過敏性のある人には,いくつか便利なツールがあります。

(1)ノイズキャンセリングヘッドフォン
(2)特殊耳栓,イヤーマフ各種
(参考:安全モール http://www.anzen.ne.jp/soundproof/category_soundproof.html



図1. BOSE社製 クワイアット・コンフォート2



図2. 各種耳栓

ノイズキャンセリングヘッドフォンは,周囲の音のうち,エアコンやパソコンのファンの音,電車や飛行機で移動しているときの騒音などなど,持続的な騒音を選択的に低減してくれる機器です。人の話し声や,突発的な音などはそれほど低減しません。個人的な感想ですが,各社から発売されている製品のうち,BOSEのクワイアットコンフォート・シリーズのノイズ低減機能は出色の出来だと思います。ただし,価格も最も高価ですが・・・。

ただ,このヘッドフォンの良いところは,自閉症児などにも使われることの多い遮音性の高いイヤーマフと違って,ヘッドフォンのサイズがとても小さく,一般的なヘッドフォンと違いのないところです。ヘッドフォンの耳を覆う部分自体が遮音性を持つ素材できているタイプの製品は,私も持っていますが非常に大きくて目立つなあと思うことがあります(刑事ドラマなんかで,射撃場で銃声の爆音から耳を守るためにつけるイヤーマフと同じようなものですし)。

ポリウレタンなど特殊な樹脂で出来た柔らかい耳栓は,指でつぶして細くした後に,耳穴に差し込むと,段々と元の大きさに戻るので,耳穴全体をきれいにふさいでくれます。そのため遮音性能がとても素晴らしいです。値段も一個百円以下のものもあり,とても手頃です。

一度テストのためにと,耳栓をつけたままで街を歩き,電車に乗ったのですが,私自身,日頃いかにちょっとした物音に注意を奪われているかがよくわかり,とても驚きました。やってみて初めてわかることはやはりあるのだなと思いました。周囲の音に無駄に注意を引きつけられることがなくなると,私の場合はいつもより落ち着いて移動することができました。電車での移動の時にも周囲のざわざわした音や電車のガタンゴトンという音が気にならなくなり,随分ストレスが少なくなったように感じました。

※要注意点!ただし,耳栓は危険回避のために必要な音まで遮断してしまうのが玉にキズ。外で移動するときには,近づいてくる車などを見落としてしまうことがあるかもしれませんので,屋外での使用は要注意です。耳栓を屋外で使用することは私は推奨しません。諸刃の刃ですね。この辺りの安全性と遮音性のトレードオフについては,最適な基準に関わる見解について研究をせねばと思っています。

発達障害への適用ポイント

・移動中など,音が聞こえないこととが問題になるような場面で,遮音性の高すぎる樹脂製の耳栓等の着用は注意を要しましょう。ノイズキャンセリングヘッドフォンや耳栓の影響かどうかはわかりませんが,最近はiPodなど携帯用の音楽プレーヤーとヘッドフォンを身につけて,音楽を聞きながら移動することがごく一般的になっているので,そうした人が電車に轢かれるなど,人身事故につながった例がニュースで話題になることもあります。

・耳栓など音を制限するツールで日常のストレスが低下することは,実際に着用して過ごしてみないと直感的にわかりにくいところがあります。耳栓をつけると,日常生活では,普段私たちは意識せず,不要な音を効率よく「無視する」ために無意識のうちにエネルギーを使っていることがわかります。不要な音がそもそも存在しないと,無視する努力が不要となり,注意を逸らされることも少なくなるので,主観的に非常に楽になります。


<1月30日追記>
クワイアット・コンフォートは「2」の画像なのに「3」と書いていましたので修正しました.ちなみに現在,私は「3」を使っています.耳を覆ってしまわないオープンタイプなので,蒸れたりすることもなく,長時間着用する分には楽に感じています.







2008年1月11日金曜日

予定や約束を忘れがちだったり、予定管理が苦手な人には?

新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

さて、新年一発目は、昨年12月のATAC2007の講義で活用法方をご紹介した、ネット上のカレンダーサービスの活用例です。ブログでも解説を掲載してほしいという要望が多かったものなのに、ずいぶん遅くなって恐縮です。ちょうど新年の始まりにあたって、今年の予定管理をこちらで試してみてはいかがでしょうか。

「Googleカレンダー」という、ブラウザから使うことのできるカレン ダーサービスがあります。以下のアドレスにアクセスしてユーザ登録すると、誰でも自分専用のカレンダーを無料で使うことができます。


Googleカレンダー
www.google.com/calendar

一見すると、日ごと、週間、月間で予定を表示してくれるシンプルなカレンダーです。しかしながら、活用法によっては発達障害のある人にとっても、便利に使うことができます。

まず第一に、予定のメールによる「リマインダ(忘れていないかお知らせしてくれること)」が役に立ちます。Googleカレンダーは、リマインダとして、携帯電話のメールアドレス宛に、予定のお知らせメールを飛ばすことができます。これを登録しておけば、予定表を自分で見返さなくても、予定表の方からあなたの携帯に「時間ですよ」とお知らせをくれるわけです。

以前の記事でも書きましたが、たとえ予定を手帳などにメモしていても、メモしたこと自体を忘れていたり、適切なタイミングで見返すことができずに、予定を逃して、困ってしまう人がいます。そうした人にはこのようなリマインダ機能を活用することを勧めています。

予定開始のどれくらい前にメールを送るかは、好みの時間を設定することができます。たっぷりと余裕を見てお知らせするか、予定のちょっと前にお知らせするか、パニックにならない程度の、ご自分のペースにあったお知らせ時間を探してみてください。

また、お知らせメールを送るか送らないかを、予定一つ一つに別々に設定することもできます。リマインダを送らないでもいい予定は、個別にお知らせメールをオフにしておけばオッケーです。

最近の携帯電話であれば、標準で予定表機能が備わっているものも多いので、Googleカレンダーではなく、こちらを使う手もあります。しかしながら、Googleカレンダーと携帯へのメールリマインダ機能の組み合わせの方が優れている点が以下のようにいくつかあります。

<入力しやすさ、見やすさ>
・パソコンで一気に予定を登録できるので、携帯からの文字入力が苦手な人でも楽に予定を登録できます。
・日ごと、週ごと、月ごととパソコンの広い画面で予定を一覧できます。カレンダーはインターネットエクスプローラなどで表示するわけですから、フォントサイズも大きくしたり小さくしたり自由に変えて、見やすくすることができます。
・「仕事」「プライベート」「イベント」など、好きな名前をつけた複数の予定表を作成することができます。予定表ごとに見やすく色分けも可能です。

<周囲の人との予定の共有>
・標準では自分以外の人は予定を見ることはできませんが、設定で許可を与えた人であれば、自分以外でも自由に予定の変更や追加が出来ます。親や教師、またはセラピスト、職場の管理者、余暇活動での仲間などなど、周囲の人が連携して発達障害のある当事者の生活支援にあたるときにも役に立ちます。みんなでひとつのカレンダーを共有して、各自が予定を入力したり、確認したりできます。
・通常のスケジュール管理以外にも、服薬管理(薬を飲むのを忘れないように、時間になったらメールで自動的にお知らせ)などにも使えます。

<その他の工夫>
メールでのリマインダ機能と、通常の携帯電話が持っている機能を組み合わせると、いろいろな楽しい工夫ができそうです。たとえばこんな工夫はいかがでしょうか。

<音声でお知らせ>
ほとんどの携帯電話には、メールの送信元アドレスごとに、着信音を変える機能があります。最近の機種であれば、着信音だけではなく、その携帯で撮影した写真や動画を流すこともできます。

Googleカレンダーの場合は、「cal-not@google.com」というアドレスからメールが送られてきます。なので、このアドレスからメールが来た場合の着信音に、自分で録音した音声を割り当ててみると活用にも広がりが出ます。

たとえば、「次の予定の時間まであと10分ですよー。メールを確認してね」と促したり、服薬管理など特定の予定の管理だけに絞れば、「お薬を飲む時間です」など。ただし後者の場合は、予定の内容は無関係になるというデメリットもありますが、メールを読む操作が難しい人の場合にも、携帯を持っておくだけで音声のお知らせを聞くことができるというメリットがあります。

メール到着に合せて音声ではなく動画(たとえば服薬している動作や薬の映像など、予定された活動の内容を視覚的に伝えるもの)を流せば、耳で聞いて理解することが苦手な人にも有効ですね。携帯の機種によりますが、「着ムービー」などという名称でメール到着に合せて動画を流す機能がある携帯があります。

以上のように、携帯電話とカレンダーサービスを組み合わせると、先の見通しをつけたり、予定を忘れないようにすることを助けるさまざまな工夫が可能です。

ほかにもいろんな活用が考えられますから、ぜひ皆さんも試してみてくださいね。