2007年11月22日木曜日

今やろうと思った作業を忘れて、つい無関係なことをしてしまうときには?



ADHDなど注意に障害のある人では、何か作業をしていても、容易に他のことに気を取られ、気が付くと、全く関係のないことをやっていることがあります。例えば、検索サイトで「著作権法37条について調べよう!」と思ったとします。表示された検索結果の中にニュースサイトへのリンクがあり、そのサイトを覗くと、今朝のニュースで話題になっていた事件の記事が気になり、ついそちらをクリック。記事を読みふけっていると、その事件に関するリンクがたくさん張ってあることに気づきました。そちらも次々にクリックしていると、あっという間に時間が経過。ふと気が付くと、自分がそもそも何をしようとしていたのかすっかり忘れてしまっていて・・・、などということも珍しくありません。どうすれば自分がやろうと思ったことをやり遂げられるのでしょうか?そんなときに効果的なのは、付箋紙のちょっとした活用です。

作業に取りかかるときに、今やろうと思っていることを1枚の付箋(ふせん)に大きく書いて、作業中、よく目立つ場所に張っておきます。例えば検索サイトなどで情報を探しているときなど、気が散りやすい、作業が脇道にそれやすいときには特に有効です。



「○○時までは○○をする」というように、区切り時間まで含めて、作業内容を書いて貼っておくと、他の作業に気が散りにくくなります。図の画像はパソコンの作業ばかりを書いていますが、パソコンを使った作業ではなくてももちろん使えます。目に付く場所に付箋を貼ればOKです。

注意に障害のある向けの工夫として、複数枚張ると、どれが重要がわかりにくくなったり、見落としたりすることがあるので、付箋は「1枚」にします。

また使用する付箋は、はがれ落ちにくいタイプのものが適しています。「フィルムふせん」は、はがれ落ちにくく、厚さが薄くて色もサイズも豊富なのでおすすめの製品です。半透明であるところもいいですね。以下のサイトで購入できます。

「フィルムふせん」
http://nkc.ne.jp/web301.html

付箋には、抽象的な目的は書かないようにします。具体的なタスクを書かないと、作業内容に幅が出てしまい、結局別の作業に気を取られることがあります。例えば「検索作業をする」では幅広すぎるので、何を調べるか具体的に書いておく、など工夫しましょう。

発達障害のある人では「時間感覚の把握」に困難のある人がいます。時間目標を定めた場合は、残り時間を視覚的に提示して、直感的にわかりやすくするためのツールと組み合わせると良いでしょう。タイムエイドについて書いている11月11日の記事も参考にしてみてください。

パソコン上で使用可能な「付箋ソフト」はたくさんあるのですが、こうした用途にはあまり向いていません。なぜなら、簡単に他のソフトによって覆い隠されてしまいますし、そもそもその他大勢のパソコンのソフトに埋没して付箋が目立たないという欠点があります。あえて実物の付箋を利用するこの方法は本当におすすめです。


2007年11月20日火曜日

やるべきことをいつも忘れてしまう!を解決する

発達障害のある人では、約束など、先々にやるべきことを忘れてしまったり、思い出せなかったりするために、忘れないようメモを活用したいと努力している人は多くいます。しかしながら、「メモ自体をよくなくしたり、持っていくのを忘れてしまう」「『メモした』という事実そのものを忘れてしまうためにメモの意味がない」と訴える人もまた多くいます。どうすればこの極端な物忘れを改善できるでしょうか?



目標管理ツール check*pad.jp
http://www.checkpad.jp/

そんなときに便利なのは、上記のようなウェブ上のTODOリスト管理サービスです。こうしたサービスでは、ウェブサイト上にシンプルなTODOリストを作ってくれる無料のサービスです。終わった項目にはチェックを付けて、やり遂げたこととやるべき事を管理することができます。

とはいえリストに載せておくことは、特に「やるべき事」にこだわる必要もありません。携帯電話での操作にも対応しているので、「これはおぼえておかねば」と思いついたことは何でも、メモ代わりに携帯メール本文に書いて特定のメールアドレスへ送ると、自動的にサイト上の自分専用のTODOリストに登録してくれます。もちろんメールだけでなく、パソコンや携帯のブラウザからも項目追加することができます。



メモ帳を取り出してメモを書くことよりも、携帯を取り出してメールを送る方が慣れている人は近年多くなりつつあり、使い始めのハードルが低いといえます。

また、設定により、毎日希望の時間に、携帯など希望のメールアドレスに、まだ終わっていないTODOを送信してくれます。

注意点として、初回登録時にパソコンが必要ですが、その際に自分の携帯電話を登録しておけば、以降は携帯のみで使用可能です。

たくさん類似のサービスがありますが、個人的にはこの「checkpad.jp」がいちばんシンプルかつかゆいところに手の届くサービスで気に入っています。「携帯電話で使える」「機能と操作がシンプル」という点が優れています。発達障害のある人では、メモしたくても、メモ自体を持ち運ぶことを忘れてしまうと訴える人がいますが、「携帯電話だけはいつも持っている」という人は多くいます。携帯電話の携行が現代人では強力に習慣化していることを上手に利用できます。そのため携帯電話だけでリストの登録・確認ができることは大きなメリットです。

さらに、設定により毎日リマインド(注意喚起)のメールを送ってくれるので、「メモしたことを忘れる」という失敗の回避にもつながります。

「すぐやること」「そのうちやること」「やれたらいいなと思うこと」と複数のリストを作成して、「すぐやること」だけをリマインドする、という使い方も可能です。または、「職場の机でやること」「買い物に出たらやること」「自宅に帰ったらやること」など、場面ごとにやることリストをまとめておくと、TODO項目が増えたときにも混乱せずに対応できます。

↑参考:GTD(Getting Things Done)のテクニック・・・GTDの解説については、Itmedia Biz.ID掲載記事 「はじめてのGTD」を参照してください。
http://www.itmedia.co.jp/bizid/articles/0606/27/news003.html

2007年11月17日土曜日

読み障害を支援するカラーフィルムをパソコン上で実現

ディスレクシア(特に読み障害)のある人に対して、「カラーフィルム」が有効な場合があると言われています。

まだそのメカニズムはよくわかっていないようですが、読み障害のある人の中には、色知覚に異常がある場合があり、それが文字の読みにくさにつながっているという説があります。そんなとき、文書が印刷された紙の上に、色つきのフィルムを乗せると、文字が読みやすく感じられるそうで、実際に海外ではそのためのフィルムが販売されている例もあります。

通常、文書は「白地に黒」で印刷されていますが、カラーフィルムを乗せることでコントラストを変えると、「文字が眼に刺さるような感覚がなくなって読みやすく感じる」という読み障害のある人の話を私も聞いたことがあります。またどの色を使うと見やすくなるかは人によって随分違うとのこと。

パソコンを使っているときにも、当然同じ事が起こります。以下のツール(「如意スクリーン」Windows用のフリーソフトです)はもともと、まぶしさを感じやすいく、画面を最低輝度にしてもまだもっと暗くしたい人のために作られたツールだそうです。画面全体に好みの色のフィルムをかけたような効果を与えることができます。フィルムの透明度も自由に操作することができます。ひょっとすると、読み障害や視覚に過敏性のある人から意見を聞いて作られたものなのかも、と思えるほど、読み障害のある人のカラーフィルタとしてぴったりのソフトで、ネット上で発見したときは本当に驚きました。

以下の画面例では、濃い緑のフィルタをかけてみました。色の選択はお好みで好きな色を選べますし、フィルムの透明度も自由に調整できます。パソコンを使っているときに、どうにも疲れやすいとか、まぶしすぎて画面が見にくいとか、字が読みにくいと感じている人は、ぜひ試してみてください。



如意スクリーン
http://soft.edolfzoku.com/nyoi/

<追記:11月22日>

書き忘れていました。「読み障害のために」と書いていますが、これは一般的なディスレクシアタイプのLDだけではなく、感覚過敏などのために読みにくさを感じている発達障害のある人も含まれます。コメントに視覚的な過敏性のあるアスペルガー症候群の当事者の方からコメントをいただいて、そこをきちんと書いていなかったことに気づきました。過敏性があるために、画面をまともに見るのがつらい方も、ぜひ試してみてください。

2007年11月12日月曜日

一度行った場所をどうしても覚えられないときには?

一度行った場所を覚えておきたくても、極度の方向音痴でどうしても上手く場所を把握できず、もう一回行きたくてもそれができない、という話をよく聞きます。発達障害のある人でなくても、土地勘のない場所に行ったときや、地図を読み慣れていない人にもいえることかもしれません。

そんなときは、GPS機能付きの携帯電話の活用がオススメです。

最近の携帯電話には、GPS機能が標準で付いているものが増えてきました。auの携帯にはすべてGPSが付いているはずですし、ドコモやSoftbankでも、GPSで位置情報を見ることができるものが多くなってきているようです。

主に携帯電話に備え付けのナビゲーションソフトからGPS機能を使うことがほとんどだと思いますが、実はそれに限らず、携帯電話のカメラ機能と組み合わせる便利な使い方があります。

  1. ここにもう一度来たい!と思ったら、その場所で、携帯電話のカメラ機能で写真を撮ります。
  2. 次にその写真に、現在位置を示すGPS情報を埋め込みます:例えばauの携帯電話であれば、カメラのメニューに「GPS情報付加」という項目があります。これを選択すると、現在いる場所のGPS情報を付加することができます。
  3. あとはパソコンのメールアドレス宛にその写真を転送してしまいます。

パソコンでその写真を見ても、一見するとごく普通の写真と変わらないように見えます。しかしそのファイルの「Exif情報」というところには、GPSの位置情報が書き込まれています。この位置情報を使って、その写真が撮影された場所を調べることができます。

埋め込まれた位置情報を手軽に調べるために、以下のページを紹介します。

PHPへの扉
http://etoh.minidns.net/php/

上記のページにある、下記のスクリプトはシンプルで極めて秀逸です。

et's Exif Viewer 2
http://etoh.minidns.net/php/sample/showexif2.php

このページで、パソコンのブラウザからGPS情報の埋め込まれた写真をアップロードすると、GoogleマップやMapionなど、ネット情報地図サービスを使って、その写真に埋め込まれた位置情報にあたる場所を地図上に表示してくれます。このサイトを使えば、GPS情報やExif情報の扱いなど、面倒なことを考えなくてもすぐに地図にアクセスできるので大変便利です。

カメラ機能とGPS機能の組み合わせは、一般的にあまり使われていないようなのですが、このようにとても便利な機能です。発達障害はもちろん、それ以外にも高次脳機能障害等による記憶障害のある人など、いつ(撮影時間情報)、どこで(GPS情報)、なにを(写真の映像)、を記憶する補助をしてくれるツールとして活用できます。

2007年11月11日日曜日

タイムエイドで時間感覚をつかむ

みなさんは「タイムエイド」というものをご存じでしょうか。

タイムエイドとは、時間の感覚がわかりにくい障害のある自閉症児のために、時間の経過を視覚的に示して、わかりやすくするために使われている製品群です。

自閉症のある人で、時間の経過を感覚的につかめない場合、作業をしている時間がいつ終わるともしれぬ無限の長さに感じられるのか、パニックを起こしてしまう場合があります。

しかし自閉症であっても、「30分」と言葉で言われるとよくわからないのですが、「このランプが全部消えるまで」と視覚的手がかりを示されると理解できる人がいます。そんな人のためによく使われています。具体的な製品としては、例えば以下のようなものがあります。

各種タイムエイド(福祉機器DB・AT2EDへリンク)
http://at2ed.jp/pro/productList1.php/categoryid/314

専用のタイムエイド機器を使って時間をわかりやすく示すのもいいですが、同じ事をパソコンを使って手軽に示すこともできます。例えば以下は、プレゼンテーションの残り時間を把握するために作られたフリーソフトですが、タイムエイドとして活用することができます。

そろそろ君
http://www.forest.impress.co.jp/article/2006/04/27/okiniiri.html


上の画像は、このソフトのスクリーンショットです。画面下部、タスクバーの上に残り時間を示すバーが表示されています。画面中のウィンドウは設定用の画面を表示させているところです。このように画面の任意の場所に、時間経過につれて段々と色が変化するバーを表示させることができます。バーの色や、残り時間は自由に設定することができます。

ちなみにこのソフト、デフォルトでは時間の経過に従って色つきの領域が増えていくようになっています。が、「残り時間」を把握するためには、だんだん色つきの領域が少なくなっていくように見えた方がわかりやすいので、そのようにカラーを調整しています。

アスペルガー症候群やADHDなど、作業の見通しが苦手な人にも、このツールは役立ちます。「あと1時間でこの作業をやろう」「あと30分は、他のことは気にせずこの作業だけをやろう」というように、作業内容を絞り込むことは、パニックを避けるために大事なテクニックです。そのときに時間がうまく把握できないと、時間の経過ばかり気になって作業に集中することが難しくなります。時間の把握を楽にするために、こうしたツールをぜひ役立ててみてください。

2007年11月9日金曜日

ブログタイトルを変更

本日から、ブログのタイトルを「発達障害のためのライフハック」にしました。これからちょくちょく関連情報をアップしていきたいと思います。よろしくお願いします。

2007年11月3日土曜日

レオナルド・ダビンチの絵画


the drawings of Leonard da Vinci
http://www.drawingsofleonardo.org/

ダビンチはアスペルガー症候群だった、という話は何が元ネタなのか残念ながら知らないのですが、いろいろなところで耳にします。上記のサイトでは、彼の手帳の中に記録されていた絵(というか詳細な観察図や図面)がまとめられています。驚くほど精緻な図ばかりです。こうしてみると、彼が特有のこだわりを持つアスペルガー症候群だ、という物言いも信じられる気がします。