2008年12月17日水曜日

空気を読むSST,シンボルと写真の活用(外国人向け日本語教育の素材を特別支援教育に生かす)

外国人を対象とした日本語教育を支援するサイトで,とても素晴らしい素材が公開されていました。

特別支援教育関連ではなく,日本語教育の教材なのでつい見落としていましたが,教育目的では自由に使用できる無料素材なので,これを使わない手はありませんね。

みんなの教材サイト
http://minnanokyozai.jp/

上記のサイトでは,会員登録(無料)してログインすると,様々な素材を使用できるようになります。利用者として日本語教師を想定してサイトが作られていますが,別段日本語教師でなくても,誰でも登録して使うことができるようです。


7,700を超えるイラスト素材を公開

例えば,イラスト素材については,「教科書を作ろう」イラスト406点,「CASTEL/J」イラスト6,795点,「UME」イラスト219点,「初級語彙イラスト集」イラスト308点が公開されていました。

いずれも,名詞はもちろん動詞を表すイラスト素材が充実しています。ちなみに初級語彙イラストはすべて動詞です。「あいさつします」「合います」「会います」「上がります(エレベーター)」「上がります(気温)」のように,動詞に対応したイラストがダウンロードできます。

まさにこれ,自閉症などコミュニケーション支援用のシンボルとして使えますね。


状況説明付き生活場面の写真素材が500枚以上

そしてこれ,この写真素材はすごいですよ。驚きました。日本人の生活に関連する場面を描写した写真が,その状況や社会的,文化的な意味を説明した文章付きで公開されていました。


衣食住と道具
衣類、飲食物、住居、道具、の四つのテーマ・・・日本人が日常生活でよく使用する あるいは目にする「もの」の写真,名詞の写真107枚

社会生活
報道・通信、医療・サービス、交通、行政、経済活動、教育、の六つのテーマ・・・日本社会における様々なサービスとそれが行われる場所を紹介する写真114枚

自然と余暇
季節・気象、地形、動植物、教養・娯楽、スポーツ、観光地、の六つのテーマ・・・日本の自然と観光地、日本人の余暇を紹介する写真49枚

行事
年中行事、冠婚葬祭、の二つのテーマ・・・日本の主な年中行事と祭り、冠婚葬祭を紹介する写真98枚

日常生活
起床・睡眠食事、美容・健康、通学・通勤、勉強、仕事、家事、交際、趣味・遊び、の九つのテーマ・・・四つの家族の構成を表す写真と、それらの家族の日常生活を紹介する写真,動詞の写真147枚


上記のように充実しているところもすごいのですが,以下,ちょっと見てみてください。「日常生活/仕事」カテゴリにある「名刺交換」のページのスクリーンショットを撮ってきました。注目すべきは,このページの「発展解説」の部分なんです。


仕(し)事(ごと)で初(はじ)めて人(ひと)に会(あ)うときには、ふつう、名(めい)刺(し)を交(こう)換(かん)します。訪(ほう)問(もん)先(さき)では客(きゃく)から先(さき)に、立(た)ったまま、名(めい)刺(し)を受(う)け取(と)る人(ひと)が読(よ)めるように向(む)けて、片(かた)手(て)を添(そ)えて両(りょう)手(て)で出(だ)します。受(う)け取(と)るほうも両(りょう)手(て)を使(つか)います。受(う)け取(と)った名(めい)刺(し)は、すぐにポケットなどにしまわず、テーブルの上(うえ)などに置(お)いておきます。その場(ば)では名(めい)刺(し)にメモなど書(か)かないようにします。
 名(めい)刺(し)には、所(しょ)属(ぞく)、役職(やくしょく)、名(な)前(まえ)、会(かい)社(しゃ)の住所(じゅうしょ)、電(でん)話(わ)番(ばん)号(ごう)、メールアドレスなどが書(か)いてあります。
 また、あいさつをするときには、ふつう、おじぎをします。おじぎは体(からだ)を30度(ど)ぐらい曲(ま)げ、頭(あたま)を軽(かる)く下(さ)げます。


内容的には「日本人が名刺交換する習慣とその作法」が説明してあります(このサイトの文字には上記のような形で全ての漢字にルビが振ってあるので,少々読みにくいかもしれません)。

他にもこの調子で,写真とともに説明が示されています。例えば「交際」カテゴリのトピックを引用してみると,以下の18件が登録されていました。

「食後のだんらんをする」
「朝のあいさつをする」
「母親同士でおしゃべりをする」
「誕生日会をする」
「手紙を書く」
「手紙を出す」
「デートをする」
「若者同士で時間をつぶす」
「飲み会をする」
「電話をかける」
「訪問する」
「会社の人と酒を飲む」
「ゴルフをする」
「相談する(公民館)」
「相談する(喫茶店)」
「カラオケで歌う」
「結婚式に出席する」
「葬式に行く」


以前,ある自閉症スペクトラム当事者の方とのやりとりのなかで「外国人向けに書かれた日本事情の本が,発達障害のあるある人にとって『空気を読む(いわゆる暗黙のルールを知る)』ことに役立つよね」という話をしました。このサイトの情報は,まさにこうした目的にも役立てられるのではと可能性を感じています。

そもそも外国の言葉を学ぶときには,言語自体を学ぶ以外に,背景情報としてその国の文化や習慣を学ぶことがとても重要です。しかもたいがい,文化や習慣は国ごとに大きく違うので,異文化の人にとって,文化習慣を学び,理解することはとても難しい。そこで外国人に言葉を教えるときには,わかりやすい教材を作る必要がある,というニーズが生じてきます。

日本生まれの日本育ちでも,物事の受け止め方に周囲とのギャップを感じたり,理解の難しい「暗黙のルール」に苦しんでいる発達障害のある人々にとっては,こうした教材に誰でも自由に触れられるようになると本当に役に立つと思います。

※ちなみにこのサイトでは,日本語の文字のアニメーション教材なども見ることができます。読み書き障害の支援にとっても役立つ教材です。









2008年12月8日月曜日

ATACカンファレンス京都2008お疲れ様でした

今年も12月5〜7日とATACカンファレンスで講師を務めさせていただきました。ご参加いただいた皆さん,ありがとうございました。

ATACカンファレンス京都2008

ATACは講師と参加者の方々の距離が近いので,終わった後にいろいろなご意見いただけたりと講師にとってもとても楽しいイベントです。たくさんのアイデアと元気をいただきました。また来年,京都でお会いできればうれしいです。

私が講師を務めたセミナーのリスト:

1)12月5日 10:00〜16:45 プリカンファレンス(講師)
「相手に正しく自分の見たことを伝えることが出来ますか?〜福祉や教育に役立つ科学的観察と記録の方法を学ぶ〜」

2)12月6日 11:20〜,13:20〜(各30分間)
LivingLibrary(むーんらいずさんの辞書役)

3)12月6日 15:20〜16:20(講師)
「思考を整理する技術 〜マッピングソフト入門〜」

4)12月7日 9:30〜10:30(講師)
「ケータイを活用する」

5)12月7日 11:00〜12:00(講師)
「Windowsの秘密 -肢体不自由・視覚障害の人に便利な機能-」

6)12月7日 13:00〜14:00(講師)
「障害のある高校生を大学へ〜合格へ向けての合理的配慮の申請とは〜」

7)12月7日 14:30〜15:30(講師)
「パワーポイントでうまれる教材」

2008年12月1日月曜日

手書きをせずにノートを「書く」楽しみを

テキスト入力専用機で書字の困難を支援する」で紹介したポメラを教えていただいたお母様とのメールのやりとりで,「入力した文字を簡単に印刷してノートが作れたら,きっと達成感があるだろうなぁ」という話をうかがいました。そこで(ちょっとイレギュラーな方法ですが)思いついたアイデア。

タカラトミー「xiao(シャオ)」
http://www.takaratomy.co.jp/products/xiao/

タカラトミーから上記のようなプリンタ付きのデジタルカメラが発売されます。これでポメラの画面をぱしゃりと撮影して,ノートにぺたりと貼り付ける,という工夫です。写真の裏に糊をつけなきゃいけないかな,と思っていたら,これ,プリントされた写真はシールになっているそうです。

ただ調べてみるとシャオは撮影距離が60cmからなので,ポメラの画面を撮影するための接写(マクロ撮影)機能はなさそうです。そこで以下のようなマクロレンズを使ってみるといいのではと思います。

ケンコー カメラ付き携帯用 おもしろれんず 寄って寄って撮れる MPL-PX 086160

これをシャオのレンズにぴたりと貼り付けて,ポメラの画面が撮影できないかなと思います。これは試してみなくては・・・。