2008年12月17日水曜日

空気を読むSST,シンボルと写真の活用(外国人向け日本語教育の素材を特別支援教育に生かす)

外国人を対象とした日本語教育を支援するサイトで,とても素晴らしい素材が公開されていました。

特別支援教育関連ではなく,日本語教育の教材なのでつい見落としていましたが,教育目的では自由に使用できる無料素材なので,これを使わない手はありませんね。

みんなの教材サイト
http://minnanokyozai.jp/

上記のサイトでは,会員登録(無料)してログインすると,様々な素材を使用できるようになります。利用者として日本語教師を想定してサイトが作られていますが,別段日本語教師でなくても,誰でも登録して使うことができるようです。


7,700を超えるイラスト素材を公開

例えば,イラスト素材については,「教科書を作ろう」イラスト406点,「CASTEL/J」イラスト6,795点,「UME」イラスト219点,「初級語彙イラスト集」イラスト308点が公開されていました。

いずれも,名詞はもちろん動詞を表すイラスト素材が充実しています。ちなみに初級語彙イラストはすべて動詞です。「あいさつします」「合います」「会います」「上がります(エレベーター)」「上がります(気温)」のように,動詞に対応したイラストがダウンロードできます。

まさにこれ,自閉症などコミュニケーション支援用のシンボルとして使えますね。


状況説明付き生活場面の写真素材が500枚以上

そしてこれ,この写真素材はすごいですよ。驚きました。日本人の生活に関連する場面を描写した写真が,その状況や社会的,文化的な意味を説明した文章付きで公開されていました。


衣食住と道具
衣類、飲食物、住居、道具、の四つのテーマ・・・日本人が日常生活でよく使用する あるいは目にする「もの」の写真,名詞の写真107枚

社会生活
報道・通信、医療・サービス、交通、行政、経済活動、教育、の六つのテーマ・・・日本社会における様々なサービスとそれが行われる場所を紹介する写真114枚

自然と余暇
季節・気象、地形、動植物、教養・娯楽、スポーツ、観光地、の六つのテーマ・・・日本の自然と観光地、日本人の余暇を紹介する写真49枚

行事
年中行事、冠婚葬祭、の二つのテーマ・・・日本の主な年中行事と祭り、冠婚葬祭を紹介する写真98枚

日常生活
起床・睡眠食事、美容・健康、通学・通勤、勉強、仕事、家事、交際、趣味・遊び、の九つのテーマ・・・四つの家族の構成を表す写真と、それらの家族の日常生活を紹介する写真,動詞の写真147枚


上記のように充実しているところもすごいのですが,以下,ちょっと見てみてください。「日常生活/仕事」カテゴリにある「名刺交換」のページのスクリーンショットを撮ってきました。注目すべきは,このページの「発展解説」の部分なんです。


仕(し)事(ごと)で初(はじ)めて人(ひと)に会(あ)うときには、ふつう、名(めい)刺(し)を交(こう)換(かん)します。訪(ほう)問(もん)先(さき)では客(きゃく)から先(さき)に、立(た)ったまま、名(めい)刺(し)を受(う)け取(と)る人(ひと)が読(よ)めるように向(む)けて、片(かた)手(て)を添(そ)えて両(りょう)手(て)で出(だ)します。受(う)け取(と)るほうも両(りょう)手(て)を使(つか)います。受(う)け取(と)った名(めい)刺(し)は、すぐにポケットなどにしまわず、テーブルの上(うえ)などに置(お)いておきます。その場(ば)では名(めい)刺(し)にメモなど書(か)かないようにします。
 名(めい)刺(し)には、所(しょ)属(ぞく)、役職(やくしょく)、名(な)前(まえ)、会(かい)社(しゃ)の住所(じゅうしょ)、電(でん)話(わ)番(ばん)号(ごう)、メールアドレスなどが書(か)いてあります。
 また、あいさつをするときには、ふつう、おじぎをします。おじぎは体(からだ)を30度(ど)ぐらい曲(ま)げ、頭(あたま)を軽(かる)く下(さ)げます。


内容的には「日本人が名刺交換する習慣とその作法」が説明してあります(このサイトの文字には上記のような形で全ての漢字にルビが振ってあるので,少々読みにくいかもしれません)。

他にもこの調子で,写真とともに説明が示されています。例えば「交際」カテゴリのトピックを引用してみると,以下の18件が登録されていました。

「食後のだんらんをする」
「朝のあいさつをする」
「母親同士でおしゃべりをする」
「誕生日会をする」
「手紙を書く」
「手紙を出す」
「デートをする」
「若者同士で時間をつぶす」
「飲み会をする」
「電話をかける」
「訪問する」
「会社の人と酒を飲む」
「ゴルフをする」
「相談する(公民館)」
「相談する(喫茶店)」
「カラオケで歌う」
「結婚式に出席する」
「葬式に行く」


以前,ある自閉症スペクトラム当事者の方とのやりとりのなかで「外国人向けに書かれた日本事情の本が,発達障害のあるある人にとって『空気を読む(いわゆる暗黙のルールを知る)』ことに役立つよね」という話をしました。このサイトの情報は,まさにこうした目的にも役立てられるのではと可能性を感じています。

そもそも外国の言葉を学ぶときには,言語自体を学ぶ以外に,背景情報としてその国の文化や習慣を学ぶことがとても重要です。しかもたいがい,文化や習慣は国ごとに大きく違うので,異文化の人にとって,文化習慣を学び,理解することはとても難しい。そこで外国人に言葉を教えるときには,わかりやすい教材を作る必要がある,というニーズが生じてきます。

日本生まれの日本育ちでも,物事の受け止め方に周囲とのギャップを感じたり,理解の難しい「暗黙のルール」に苦しんでいる発達障害のある人々にとっては,こうした教材に誰でも自由に触れられるようになると本当に役に立つと思います。

※ちなみにこのサイトでは,日本語の文字のアニメーション教材なども見ることができます。読み書き障害の支援にとっても役立つ教材です。









2008年12月8日月曜日

ATACカンファレンス京都2008お疲れ様でした

今年も12月5〜7日とATACカンファレンスで講師を務めさせていただきました。ご参加いただいた皆さん,ありがとうございました。

ATACカンファレンス京都2008

ATACは講師と参加者の方々の距離が近いので,終わった後にいろいろなご意見いただけたりと講師にとってもとても楽しいイベントです。たくさんのアイデアと元気をいただきました。また来年,京都でお会いできればうれしいです。

私が講師を務めたセミナーのリスト:

1)12月5日 10:00〜16:45 プリカンファレンス(講師)
「相手に正しく自分の見たことを伝えることが出来ますか?〜福祉や教育に役立つ科学的観察と記録の方法を学ぶ〜」

2)12月6日 11:20〜,13:20〜(各30分間)
LivingLibrary(むーんらいずさんの辞書役)

3)12月6日 15:20〜16:20(講師)
「思考を整理する技術 〜マッピングソフト入門〜」

4)12月7日 9:30〜10:30(講師)
「ケータイを活用する」

5)12月7日 11:00〜12:00(講師)
「Windowsの秘密 -肢体不自由・視覚障害の人に便利な機能-」

6)12月7日 13:00〜14:00(講師)
「障害のある高校生を大学へ〜合格へ向けての合理的配慮の申請とは〜」

7)12月7日 14:30〜15:30(講師)
「パワーポイントでうまれる教材」

2008年12月1日月曜日

手書きをせずにノートを「書く」楽しみを

テキスト入力専用機で書字の困難を支援する」で紹介したポメラを教えていただいたお母様とのメールのやりとりで,「入力した文字を簡単に印刷してノートが作れたら,きっと達成感があるだろうなぁ」という話をうかがいました。そこで(ちょっとイレギュラーな方法ですが)思いついたアイデア。

タカラトミー「xiao(シャオ)」
http://www.takaratomy.co.jp/products/xiao/

タカラトミーから上記のようなプリンタ付きのデジタルカメラが発売されます。これでポメラの画面をぱしゃりと撮影して,ノートにぺたりと貼り付ける,という工夫です。写真の裏に糊をつけなきゃいけないかな,と思っていたら,これ,プリントされた写真はシールになっているそうです。

ただ調べてみるとシャオは撮影距離が60cmからなので,ポメラの画面を撮影するための接写(マクロ撮影)機能はなさそうです。そこで以下のようなマクロレンズを使ってみるといいのではと思います。

ケンコー カメラ付き携帯用 おもしろれんず 寄って寄って撮れる MPL-PX 086160

これをシャオのレンズにぴたりと貼り付けて,ポメラの画面が撮影できないかなと思います。これは試してみなくては・・・。







2008年11月10日月曜日

どこかで紛失した持ち物を戻って来やすくする方法

過去にこのブログで,持ち物をなくしてしまうことを防ぐ「道具」について紹介しました。身につけていた物が一定の距離以上遠くへ離れると,音を鳴らして知らせてくれるセンサーや,持ち物を置いておく場所のルールを決めて忘れ物を少なくするためのちょっとしたトレーなどを紹介しました。


落とし物や忘れ物を避けるためのツールと工夫
http://fagoa.blogspot.com/2008/03/blog-post_23.html

落とし物を発見するキーホルダー
http://fagoa.blogspot.com/2007/10/blog-post_5265.html


今日ご紹介するのは,持ち物を失くしてしまっても,できるだけ戻ってくるようにする,という面白いサービスです。失くさないように・・・と気にするのではなく,紛失してしまうことを前提にしているところが面白いですね。


紛失物回収サービス「マイブーメラン」
http://www.bij.jp/


・年会費1,260円を払う
・専用のタグを物品に付けておく
(最初はタグが3つしかないので追加で欲しければサイトで購入する)
・その物品をなくしてしまったとき,拾った人がマイブーメランの会社窓口に連絡する
・マイブーメランが回収して拾い主に謝礼を渡す
・マイブーメランが持ち主に届けてくれる

・・・というサービスです。会費制なので,年会費を払っている期間は,何回紛失して回収しても追加料金は発生しないそうです。いいですねこれ。

しかも,米国ブーメランイット社と提携していて,海外で失くしたものも届けてくれるそうです。そういえば私も以前,アメリカで携帯電話をなくして,とても面倒な思いをしたことがあります。いろいろと手続きがあるのは仕方ないですが,結果として見つからなかったのが残念でした。

海外だけに限らず,慣れない土地に行ったときは,不慣れから焦って不注意が起こりやすくなり,失くし物が増えますよね。それだけでなく,慣れない場所ではなくしものを満足に探すこともできない場合が多いです。そういう時にも便利なのでは,と思います。

とはいえ,注意に困難のある人の場合,良く慣れているところでも,自分でもびっくりするくらい失くし物をする,とよく伺います。なくしものって,自尊心がとても傷つきますよね。「どうして自分はこんなにダメなんだ」と落ち込んでしまいます(失くしたことがわかるのは本人だけなので,周囲からはどうしてそんなに落ち込んでいるのか不思議がられることになります)。物を紛失したことをきっかけに,大きなパニックを起こしてしまい,より大変なことになる場合もあります。

また,仮に誰かが拾ってくれたとしても,直接連絡を取り合って渡す,というのも物騒な現代では難しいですから,隙間を突いた良いサービスなのではないかと思います。

紛失することが日常茶飯事になっているので全く動じずに諦めてしまえるというADDの達人もいますが,それでも失せ物が出てくることほど嬉しいことはないですから,気になる人は試してみてください。私もやってみようと思います(実は私も達人の域に達しています)。

>T内さん,
面白いサービスを教えてくださってありがとうございました。



2008年11月9日日曜日

テキスト入力専用機で書字の困難を支援する

なんと文具メーカーのKingJimから,テキスト入力だけに特化した機器が11月10日に発売されることになりました。このニュースが発表されてすぐ,ある書字に困難のある子どもさんのお母さんから「こんなの出るよ」と教えていただいて,すごく驚きました。まさか日本のメーカーからこんな素晴らしい製品が出るとは!

私たちも書字に困難のある子どもに,パソコン上のワープロソフトやソフトウェアキーボード,チャットソフトなどを使って,文章を綴る楽しみ,文字で誰かにメッセージを伝える楽しみを早いうちから感じてもらうことを実践しています。

文字を書く訓練にこだわるあまり,その先にある文字を通じたコミュニケーションという目的やそこにある楽しさが感じられず,文字に関わること自体がトラウマになってしまうことがあってはならないと思うからです。ところが勉強の場面では,学校になかなかパソコンを持ち込めないという現実を悲しく感じていました。

ポメラは本当に「文章の入力と記録だけしかできない」ので,ペンやノートなどの文房具と同じようにとらえられ,学校場面にも持ち込むことができるのではないか,という期待があります(同じコメントを前出のお母さんからもいただいています)。価格も定価で2万7千円,実売では2万円を切る値段になるようです。


デジタルメモ帳「ポメラ」——文庫本サイズのテキストエディタ登場
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0810/21/news075.html

「ポメラ」関連のニュース
http://news.google.co.jp/news?q=%E3%83%9D%E3%83%A1%E3%83%A9


本当は,教育場面でもパソコンを持ち込んでその子どもの困難さに合わせたソフトウェアを使えるようになるといい,と思うのですが,なかなか壁は厚いですね。そんなときに,こんなニュースを見つけました。


インテルと内田洋行、ICT 教育の普及に向けて柏市の公立小学校2校で実証実験
http://japan.internet.com/public/news/20080807/4.html


企業が支援して,学校場面にパソコンを導入する試みはまだ始まったばかりです。上記の記事のような大規模な試みが継続的に行われよう,応援したいです。

ただ気になるのは,パソコン導入の目的として「反復訓練」に重きが置かれている点です。学校教育の場面からパソコンが導入されることで,ネット利用や機能代替・拡大ソフトウェアが利用できる可能性が生まれます。その可能性を生かすことができれば,学習面に様々な困難ある子どもが皆と同じ場に参加できるようになるという効果も生まれます。さらに,そうした拡大・代替で生まれる,これまでになかった「新しい知」を感じられる場にもなるでしょう。それを見抜いて記録する受け皿を,教育を実施する側に用意しておいて欲しいと思います。ただのパソコン・ドリルで終わるだけではもったいないです。






共有は便利,でもセキュリティには注意。

Googleでの予定表や地図などを,公開設定を調整して閲覧制限をかけ,仲間内だけで共有する機能はとても便利です。ところが最近,意図せぬ過分な情報公開が懸念されてもいます。教師が生徒の個人情報を気付かず公開してしまう,というケースも多いようです。


Googleマイマップで意図せぬ情報公開多発、「うっかり」で済めばいいが
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0811/09/news001.html

Google:マイマップの公開設定をご確認ください 2008年11月4日
http://googlejapan.blogspot.com/2008/11/blog-post.html


こうしたことで便利な機能が敬遠されてしまうのはナンセンスだと思いますが,不利益を被ったり,不安や不快感を感じる人が生まれないように,セキュリティにはくれぐれも注意しましょう。私も気をつけねばと思いました。

2008年10月22日水曜日

当事者の語りに触れるには

前回,当事者の語りについてのサイトの話題を出しました。障害に限らず見てみると,マイノリティ(少数派)の人々に対する偏見,知らないことから来る不安をなくすことなどを目的とした活動や,それに関連したウェブサイトがあります。


「がん患者の語り」データベース
http://www.dipex-j.org/

「がん患者の語り」データベースとは?

このプロジェクトは、乳がんまたは前立腺がんを体験された皆さんに、最初に診断を受けたときの気持ちや治療法の選択において参考にしたこと、闘病中に困ったこと、生活への影響などについてインタビューさせていただき、その内容を系統的に整理して、データベース化しようというものです。一部はインターネット上の『がん患者の語りウェブサイト』に公開されます。英国Oxford大学で作られているDIPEx(Database of Individual Patient Experience)というデータベースがモデルになっています。



BBCが"Living Library"のニュース動画を配信中
http://current.ndl.go.jp/node/7808

この「Living Library(生きた図書館)」という活動は,元は暴力や武力侵略をなくすために始まったものとのこと。そうしたぶつかり合いの元になっている,世の中のマイノリティに対する誤解や偏見をなくし,相互理解を深めるために行われている活動です。警察官,菜食主義者,肥満の人,特定の宗教の教徒,ティーンエイジャー,そしてもちろん障害のある人など,さまざまな人々が「生きた本」としてイベント中で「貸し出され」,借りた人はその「本」と30分間ゆっくり話をすることができる,というものだそうです。誤解を助長しないために,マニュアルも作られています。面白い活動ですね。

ATARIMAEプロジェクト:障害者があたりまえに働けるニッポンへ

障害のある人の就労についての情報サイトが新しくオープンしています。メールでの相談窓口も用意されていますね。タレントを起用して,働く障害当事者の語りも少し見られるようです。

ページの最下部,「働きたい障害者の皆さんへ」のところで,障害のある人が厚生労働省の制度を活用して雇用に至るまでの流れが図にまとめられ,説明されていたりするので,この辺りをよくご存じない方には全体を見渡す良い資料になると思います。


ATARIMAEプロジェクト:障害者があたりまえに働けるニッポンへ
http://atarimae.jp/


私も,障害者雇用礼賛という感じでもなく,(社会生活全般の話題を,もっと中立的に善し悪し含めて)当事者からの語りや体験談,そこから生まれたライフハックなどを見ることができるサイトを作りたいなと思って,準備しています。ちゃんと形にしようとしていますが,日の目を見るのはいつの日か。

2008年10月15日水曜日

過集中からくる疲れを防止する方法

タイマーの活用などで過集中(長時間集中しすぎてしまうこと)からぐったり疲れ切るのを防止する、という事例はいくつか紹介していますが、さらに追加です。


一定時間ごとに目を休めるように警告してくれる『EyeDefender』
http://www.ideaxidea.com/archives/2008/09/eyedefender.html


あらかじめ設定しておいた時間が経過すると、画面に画像を表示したり、目のトレーニングが始まったり、スクリーンセーバーが起動したり、メッセージを表示して休憩をうながしたりと、いろんな方法で休憩をとらせてくれます。

海外のソフトなので、使用方法を少し解説しておきますね。



このソフトをインストールして起動すると、画面の一番下にあるタスクバーに「目のアイコン」が表示されます(上記画像の一番左のアイコン)。このアイコンを右クリックすると、設定メニューが現れます。





「Interval between breaks」で、何分たったら休憩するかの間隔を設定することができます。あらかじめ設定されているのは15〜90分までの5種類ですが、「Custom...」で好みの時間間隔を設定することもできます。





「Break duration」では、何分間休憩するか、休憩時間の長さを設定できます。こちらも1〜10分であらかじめ設定されていますが、「Custom...」で好みの時間間隔を設定することもできます。

また、標準の状態では「Enabled」にチェックが付いていますが、チェックを外すと、このソフトの機能をオフにすることができます。





先ほどのメニューの「Settings」をクリックすると現れるのがこの画面。「Notification」のところで、「休憩時間にどんな画面を表示するか」を選ぶことができます。

「Show pictures in a folder:」を選択しておくと、右のボックスで指定したフォルダの中にある画像を表示してくれます。





「Start the visual training」では、目のトレーニング画面が表示されます。

まず画面全体が真っ暗になり、「Sit comfortably. Relax your eyes. Blink several times during the break period. Use the [SPACE] key to switch the next exercize.(無理なく腰掛けて、目をリラックスさせてください。休憩時間には何度も瞬きをすることを心がけてくださいね。スペースキーを押すと、次のエクササイズに進みます。)」と表示されます。

しばらく待つか、スペースキーを押して先へ進むと、上記のような画面が目の運動として表示されます。最初の格子模様はヘルマン格子と呼ばれる図形(周辺視野にある交点にあるはずのない白い点が見える)ですね。次の画像は静止画なので伝えにくいのですが、画面の端からは時まで白色の視覚が動き回り、それを目で追う、という訓練のようです。他にも回転運動する白い点を目で追いかける課題など、いくつかあります。訓練の種類は、スペースキーを押すことで切り替えられます。

「Activate a default screen saver」を選択すると、スクリーンセーバーが起動します。


「Show a popup balloon in system tray」を選択すると、指定の時間が経過したときに、休憩をうながす以下のようなバルーン・メッセージを表示してくれます。




かなり機能の充実したフリーソフトで、個人的にとても気に入りました。パソコン作業で過集中が起こりやすく、疲労を感じている人は、試してみてください。

もちろん、以前紹介したタイマーの活用のように、「次の休憩画面が表示されるまでは今の作業だけに集中しよう」というように、やる気と集中の持続を助けるツールとして使っても良いですね。

2008年10月7日火曜日

オンラインの大学講義公開・まとめ記事

オンラインで講義を公開している大学のサイトについて、とても良くまとまったブログ記事がありました。「ひげぽん」さんのまとめ記事です。

オンラインで動画・音声・教科書を無料で公開している大学の講義・授業まとめ

http://d.hatena.ne.jp/higepon/20080929/1222686239

日本と海外の公開された授業サイトへのリンクの他、動画・講義資料などの公開されている情報種別や、講義の科目例もまとめられています。素晴らしい!

東大の講義も、本当にたくさんの専門に渡ってビデオ公開されていますから、どんな分野に進もうかと考えている高校生の皆さんにとっても、大学の雰囲気を感じるいいツールになると思います。

携帯メールで「あと何分?」を超カンタンにお知らせ

これまでも時間感覚を助けるタイマーやリマインダを紹介してきました。

今回は携帯電話の本体でタイマーやスケジュールを設定するよりカンタンかもしれない、「あと何分?」をメールで教えてくれるリマインダを2つ紹介します。


ToDoMail
http://www.aivy.co.jp/products/todomail.html



todomail@aivy.co.jp宛に、タイトルに日時を記載したメールを送ると、その時間にメールを返信してくれるという無料のサービスです。

特に登録は必要ありません。ただ、このメールアドレスに送れば、送ったアドレスに返信を返してくれます。

例えば、「今日の午後3時頃に○○さんに電話しなきゃ」と思ったら、タイトルに「1500」、本文に「○○さんへ電話 090-xxxx-xxxx」などと入力して、上記の宛先にメールを送っておけば良いわけですね。すると指定の時間にその本文の内容が記載されたメールが飛んでくると。(このToDoMailは、とある当事者の方から教えていただきました。Mさんありがとうございます!)



Hit Me Later
http://www.hitmelater.com/


すごくシンプルで良いなと思ったのがこのサービスです。例えば、「1時間後にお知らせが欲しいなぁ」と思ったら、「1@hitmelater.com」にメールを送ります。同様に「12時間後」なら「12@hitmelater.com」に送ります。このように、@の前に入力した数字に従って、メールを自動的に返信してくれるサービスです。

こちらも特に登録は必要ありません。単にメールを送れば良いだけです。

他にも、「5分」なら「5m@hitmelater.com」のように数字に「m」を付けることで、分単位にも対応しています。アドレス帳によく使う時間間隔のメールアドレスを登録しておくと便利ですね。

ただし、こちらは「Basic(無料)」「Pro(年12ドル)」「Exec(年30ドル)」という3つのサービス種別があります。無料のBasicは24時間先までの返信にしか対応していません。24時間以上の間隔を指定したメールを受け取るためには、有料版に加入しないと行けないのが面倒・・・。

さらに、HitMeLater.comから、自分がタイトルと本文に記載したものをそのまま送り返してくれるのですが、日本語だと文字化けします。時間指定の方法がすごくシンプルで面白いので、日本語に対応してくれるとさらに良いのですが、この点はちょっと残念。

私の場合は、以前ご紹介したバイブレーション付きカードタイマーは99分、私の持っている携帯電話は60分までしかタイマーが対応していません。2時間とか3時間とか、ちょっと長めの時間を指定したいとき、タイマーのかわりに使っています。「半日(6時間くらい)後に○○さんにもう一回連絡しなきゃ」などと思ったときに、「call marumaru-san」とか書いてメールしておく、といった使い方です。




以上、メールなので遅延や不達も発生するでしょうから、確実にお知らせを受け取りたい場合には別の方法も用意しておいた方が良いと思いますが、ちょっとした自分用のリマインダなら、こうした方法も面白いかもしれないと思いました。携帯電話に使いやすい簡易タイマー機能がない人とか、カードタイマーを持っていない人にも便利だと思います。

2008年10月2日木曜日

ウェブページでどこを見ればよいか混乱しないために

Reading Blinds — a YUI-powered Reading Tool
http://yuiblog.com/blog/2008/09/30/r­eading-blinds/

スクリーンルーラーのような機能*1をブラウザに提供してくれるブックマークレットが公開されていました(idea*idea経由で知りました)。

*1 Claro Software製のScreen Ruler。機能のデモはこちら。日本でもこころリソースブック出版会から販売されています。



ディスレクシアだけに限らず、発達障害や高次脳機能障害のために注意に障害のある人、高齢者や子どもなど、読みに困難のある人がウェブページを読むときに助けになるツールです。

画面のマウスのあるライン以外を覆い隠してくれるので、邪魔な情報を隠し、読みたいと思っている部分だけに集中して読むことを助けてくれます。

ワープロなどそのほかのソフトでこの手の機能を使いたい場合は、前述のスクリーンルーラーを使うと良いと思います。

<インストールと起動の仕方>

上記ページのずーっと下の方に、

「That’s the lot. You can download readingblinds.js and include it in your site, or you can drag the following link to your links toolbar: Reading Blinds.」


という文章があります。

この文の最後の「Reading Blinds」のリンクをクリックすれば、Reading Blindsが動き出します。

このページ以外で使うときには、ブラウザのブックマークに登録し、望みのウェブページ上でこのブックマークを呼び出すと使用できます。ブラウザ上で動くものなので、OS問わず使うことができます。

<使い方>

Reading Blindsを起動して(日本語入力をオフにした状態で)、「l(←Lです)」で覆われていない部分の幅を広げ、「s」で幅を狭めます。

Reading Blindsの機能のオンオフを切り替えたいたいときは、「b」を押します。

2008年9月23日火曜日

スタンフォード大学の工学コースがネット公開

素晴らしい試みが始まりました。スタンフォード大学の工学コースで行われている授業の一部が、ネット上で公開されました。

Stanford Engineering Everywhere
http://see.stanford.edu/default.aspx

・コンピュータサイエンス入門(プログラミング関連)
・人工知能(自然言語処理、機械学習など)
・線形システムと最適化(フーリエ解析など)

私は工学系の大学出身ではないのでよくわからないのですが、おそらく上記は工学系の学生が大学に入学して比較的初期に学ぶ事柄だと思います。しかし内容はスタンフォード品質ですから、きっと良質なものなのではと思います。

授業の様子はYouTubeなど動画で公開されているのに加え、講師の話もすべて文字原稿として書き起こされたものを見ることができます。両方ダウンロードしてiPodで見ることも考慮されたといえる作りになっています。

これはすごいですね。発達障害や視覚障害など多様な障害のために、授業に参加することが難しい学生たちにはもちろん、多くの人々にとって意義のある教育サービスだと思います。

2008年9月6日土曜日

やる気が続かない/集中しすぎて疲れてしまうときには?(「タイマーの活用」編)

長時間の作業を続けていると,途中でつい,やる気がなくなって他のことが気になり,そちらを始めてしまうことがありませんか?ちょっとした気分転換で他の作業をするのはとても良いことです。しかし,気がつくと気分転換のために始めたはずの作業に時間を取られすぎてしまい,一日が終わってみると,本来やろうと思っていた作業が全然進んでいなくてガックリ,という結果になることもあるのではないでしょうか。

または,「少しだけこの作業をしようかな」と思って始めた作業を,つい何時間もぶっ続けでやり続けてしまい,ぐったり疲れ切って,次の日,他の作業ができなくなってしまった,という経験はありませんか?この「疲れ」というのは困難のない人にはなかなか理解してもらえないので、少しでもそれを楽にする方法を試してみるのはおすすめです。

注意に困難さのある人の場合,過剰に気が散ったり,集中しすぎてしまったりと,「自分が現在行っていることについての気づき」がうまくいかないことがあります。この気づきが得意な人は,作業の合間に時々,自分自身を別の視点から眺める「振り返りチェック」を無意識のうちに行っているようです。「今やっていることは当初やろうと思っていたことか?」「今,自分はどれくらい作業を続けているか?」「今,最初に決めた目的にどれくらい近づいているか?」などです。いわばこれが作業がずらさずやり遂げるためのコツのひとつなのですが,注意に困難があると,どうしてもそのチェックをするタイミングを逃してしまいがちです。

そんなときには,タイマーを上手に使ってみると、チェックのタイミングに気づきやすくなります。

用意するもの

用意するものは,「あと○分」のようにカウントダウンができるタイマーです。
・携帯電話のタイマー機能
・100円ショップで売られているキッチンタイマー
・カード型タイマー(バイブレーション機能付き)→例えばこれとか


手軽に手に入るものには,上記のようなものがあります。携帯電話には,カウントダウンのできるタイマー機能が付いている場合があるので,それを活用してみるのもよいと思います。個人的にポイントだなと思うのは,「バイブレーション機能があること」ですね。上記で紹介しているバイブレーション機能付きのカード型タイマーは,タイマーをセットしてシャツの胸ポケットなどに入れておけますし,操作も単純なので便利そうです。パソコン作業に限定するなら、以前紹介したそろそろ君を使うのも良いと思います。

手順

(1) 今からやろうとする作業の内容を決める。「机の上にある書類を分類して机のひきだしに納める」「○○さん宛のメールを書く」など,できるだけ具体的で,1種類の作業に限定します。「部屋を片づける」など,たくさんの作業からなる,おおざっぱな内容にしてしまうと,後で行う作業の振り返りがうまくできないので,それは避けましょう。

(2) 作業を続ける時間を決める。気が散りやすい人は10分程度の短めの時間にします。集中して長時間やりすぎてしまう人は,45分など,続けて作業したときに,自分にとって疲れにくい程度の時間にします。

(3) タイマーをセットする。(2)で決めた時間にセットします。

(4) 作業に取りかかる。

(5) タイマーが鳴ったら,必ず「振り返りチェック」をします。面倒でも,必ず以下のポイントを振り返って見直してみてください。この振り返りを入れない場合,自分でタイマーを止めたことを忘れて作業を続けてしまったり,ついつい関係のないことを始めてしまったりと、せっかくの気づきをスルーしてしまうこともあるので、「鳴ったら振り返る」はお題目ににして心に留めてみてください。

チェック項目
□ (1)で決めた作業を続けているか?
□ 無事終了したか?
□ どの程度終わったか?
□ 疲れすぎていないか?
□ 長時間(1時間以上)休みなく作業を続けていないか?

(6) 振り返りの結果を受けて,さらに作業を続けるか,やめるか,休憩を入れるかを判断します。続ける場合は(2)から(5)を再び繰り返します。

以上です。

以前紹介した「今やっていることを表示するポストイット」のテクニックと組み合わせて,自分がやっている作業を見失わないようにするのもおすすめです。

上記の(1)で行ったように,作業を具体的な細かいステップに分けて,その進み具合を振り返りながら作業をすすめると,小さいながらも自分がやり遂げた作業が目に見えるので,なんだか一日が終わったときの満足感に違いが出てきます。

あとは、「部屋を片づける」といったおおざっぱな内容を,どうやったらうまく具体的な,1種類の作業に分解していけるのかについては,また次回。






2008年7月8日火曜日

読み上げソフトについての質問あれこれ

今回は、読み上げソフトをいくつか紹介する中で、Windows環境で読み上げソフトを使う上でわかりにくい点をまとめてみます。(以前「実践障害児教育」に掲載した「読み書きの困難を支援する」の記事について、さらに進んだ説明でもあります。)

Q. 読み上げソフトにはどんなものがあるの?

 海外のものも含めて、沢山のソフトが公開されていますが、私が実際に使ってみたり、紹介してもらったりして、読みに困難のある子どもたちに便利だと思った3つのソフトを紹介します。

読み上げソフトとは、実際には「音声エンジン」と、その音声エンジンをコントロールしたり、文字の表示をいろいろと工夫してくれたりする「読み上げソフト」の組み合わせから成っています。音声品質としておすすめは1番目の組み合わせですが、音声品質は劣るとはいえ、読み上げを無料ですぐに試すには3番目の組み合わせを試してみてください。


1) Natural Reader ←個人的なおすすめ

入手先:http://www.naturalreaders.com/



長所

  1. ハイライト表示機能がある。読み上げている場所、読み上げている単語を、背景と文字の色を変えて表示(ハイライト表示)してくれる。そのため、文章のどこを読み上げているのかがわかりやすい。
  2. 操作がシンプルでわかりやすい。基本的に画面に表示されているのは、再生・停止ボタンと速度調整(Speed)、音声エンジン選択(Speeker)だけで、それだけ操作できればよい、という割り切ったシンプルさ。
  3. 表示するフォント、文字の大きさも変更できるので、極端に大きな文字にして見やすくするなどの工夫もできる(メニューの「Control」→「Sttings」→「Font」タブ→「Change Font」ボタンを押す)。
  4. 有償だが、SAPI5に対応する日本語エンジン(説明は後述)の中には、非常に流ちょうに日本語や英語を読み上げるものが登場している。
  5. 無料であること。


短所

  1. 英語の音声エンジンは(あまり流ちょうとはいえないが)付属しているものの、日本語の音声エンジンを別途インストールしないと、日本語読み上げには使用することができない。
    → 日本語の音声エンジンは、「SAPI 5」に対応した音声エンジンが必要。この説明は後述します。

  2. 海外製品なので、ダウンロードして入手するとき、インストールするとき、画面のメニュー、設定画面などが英語。
    →実際には画面の指示に従えばインストールもできますし、操作も、読み上げたい文書を貼り付けて、再生・停止ボタンを押すだけなのですが、やはりメニューなどが英語だと敬遠されがちです。




2) MO Speech

入手先:http://www.laboreconomics.org/



長所

  1. 操作が極めてシンプル。とにかく読み上げたい文字列の範囲を選択してコピーすると即座に読み上げ。
  2. 無料であること。


短所

  1. 読み上げエンジンは全く付属していないので、自分でSAPI5に対応した音声エンジンを導入する必要がある。



3) Text to Wav

入手先:http://noah0.blog119.fc2.com/
※Special thanks to TK先生・・・このソフトを教えていただきました。ありがとうございますm(_ _)m




長所

  1. 多機能。句点ごとに一文ずつ読み上げてくれたり、画面の文字サイズをつまみを調節するだけで拡大縮小できたり、背景やフォントの色をボタンひとつで好みのものに変えたり、読み上げた音声をMP3(音声ファイル)に出力できたり、のように多彩な機能がある。
  2. 対応する日本語音声エンジンを、無償で手に入れることができる。とにかく読み上げソフトを使ってみたいならまずはこのソフトを使うべし。
  3. 作者の方が日本人なので、ネット上に日本語の説明書がある。
  4. 無料である。


短所

  1. 読み上げエンジンは付属していないので、自分で「SAPI4」に対応した音声エンジンを導入する必要がある。
  2. SAPI4の日本語や英語の音声エンジンには、あまり流ちょうに読み上げるものがないので、読み上げ音声の品質は良いとはいえない。
    ※作者のNoahさんがSAPI5対応をTODOに挙げておられます。とても素晴らしいソフトなので、SAPI5対応を首をなが〜くしてお待ちしております!

  3. メニューなどが英語表記。



Q. 日本語音声エンジンの入手方法は?

日本語音声エンジンを使う、とひとことで言っても、SAPI(Speech API:Windows上で動くソフトウェアに読み上げ機能を提供する仕組み。音声エンジンもこれに含まれる)のバージョンによって、いくぶん違いがあります。

このSAPIには、大きく分けてバージョン「4」と「5」が」あります。

SAPI5対応の音声エンジンを手に入れる

最近のWindows用のソフトウェアで使われている音声エンジンは、基本的にこちらのバージョンのものになります。今回紹介したソフトの中では、Natural ReaderとMO SpheechはSAPI5に対応した音声エンジンが必要です。

日本語でSAPI5に対応した音声エンジンを入手するためには、Microsoft Office 2003に付属の読み上げ機能をインストールするか、市販の日本語対応音声エンジンを入手してインストールする必要があります。(編注:XP→2003に改めました。しかしながら、この辺ちょっとよく把握していません。XPにはSAPI4の日本語音声エンジンが付属していて、2003にはSAPI5だったかもしれません。どちらも手元になく確認ができませんでした。)

市販のものでは、例えば、XP Navo(ナレッジクリエーション社製)を購入して、これに付属しているSAPI5対応の音声エンジンを導入すると良いでしょう。このXP Navoには、個人的におすすめの音声エンジン「Misaki(日本語、女性)」のほか、「Show(日本語、男性)」「Miyu(日本語、女性)」「Kate(英語、女性)」の4つ(いずれもペンタックス製の音声エンジン)が含まれています。

ペンタックスの音声エンジンは、http://voice.pentax.jp/でデモンストレーションを試してみることができます。驚くほど読み上げ品質が高い日本語音声エンジンです。Misakiの音声は私の周りにいるユーザの間でも人気です。私もお気に入りだったりします。

SAPI4の音声エンジンを手に入れる

ちょっと古いバージョンなのですが、SAPI4に対応した日本語音声エンジンは、ウェブ上でダウンロードして入手することができます。さらに、前述した高機能な読み上げソフトウェア「Text to Wav」はSAPI4にのみ、対応しています。このソフトを使おうと思ったときには、SAPI4の音声エンジンを入手しておく必要があります。

この入手方法についても、Text to Wavのページで詳細に説明してあります。http://noah.ninja-web.net/soft/texttowav.htmlを開き、左のメニューにある「FAQ」をクリックしてください。その一番上、「起動時にエラーメッセージが表示されて終了してしまいました。」をクリックすると、SAPI4の入手とインストール方法が説明してあります。


(以上)

2008年6月27日金曜日

アスピーズ in 米国のIT業界

おもしろい記事が「COMPUTERWORLD.jp」という雑誌に掲載されていました。米国のIT業界で働くアスペルガー症候群の人々の様子が紹介されています。記事中ではアスペルガー症候群の人々が「アスピーズ(aspies)」と呼ばれていました。

以下のページで、翻訳された全文を読むことができます。

IT業界で闘う“アスピーズ”
アスペルガー症候群を抱えたITプロたちの“苦悩”と“現状”

http://www.computerworld.jp/news/trd/111349.html

最初の方は一般的なアスペルガー症候群の説明や事例が多いですが、後半は米国の職場で陰ながら行われている取り組みなんかにも触れてあり、興味深いです。以下、8ページ目の文章を一部引用します。

アスピーズが切望するよりよい職場環境とは

 アスピーズが職場で抱えている「社会的相互交渉が困難」という課題は、先進的な人事部門でさえ理解できないほど微妙なことなのかもしれない。しかし、だからといって、アスピーズの支援に消極的であることを正当化する理由にはならない。専門家は、「アスピーズに配慮した環境作りといっても、大がかりなものである必要はない。また、“アスピーズに特化した”と考える必要もない」とアドバイスする。

 Grandin氏らは、オフィス環境に物理的な工夫をするのも1つの施策だと指摘する。多くのアスピーズは、照明の明滅、エアコンやコピー機の動作音、電話の呼び出し音を不快に感じている。オフィス内でのちょっとしたしゃべり声すら苦手だという場合も多い。そういった音のしない空間を確保したり、防音設備を整えたり、あるいはホワイト・ノイズを流したりすれば、オフィス環境は改善できる。

 また公式には発表されていないが、Microsoftはアスピーズ支援のために「バディ制度」導入しているという。これは定型発達者(非自閉症者)とアスピーズとがペアを組み、会議などの社会的相互交渉の必要性を教える制度だ。多くのアスピーズはこの制度を「実際に行われているのであれば、評価できる」としている。


バディ制度には私も賛同します。現実的には運用段階で難しい点も出てくると思いますが、こうしたことをすぐに実践できるような職場環境であることが、すでに望ましい環境だと思いました。

さらに途中には「In My Language」というYouTubeの動画も紹介されています。これは自閉症者の世界観を、A・バックスという当事者が語る(言葉を地声ではなく、音声エンジンで発話させているところがまた面白い)動画です。私にはとても芸術性の高い映画のように感じられました。

2008年6月2日月曜日

注意の障害のある子どもを支援する

こちらもすでに既刊となっていますが,月刊実践障害児教育の6月号では,「注意の障害」に焦点を当てて,テクノロジーによる支援の方法をいくつか紹介しています.

基本的には,「プレゼンテーションツールの活用で注目をうながす方法」と「過剰な刺激を制限するグッズで落ち着きを助ける方法」を中心に紹介しています.

ADHDの障害特性はこうだから,とか,発達障害の障害種別にはこだわらずに,授業場面で注意に困難を抱える子どもたちがどんなことで困っているか,またそれをサポートするためにはどうする?という視点でまとめています.

実践コーナーでは,マイクロソフト社のパワーポイントを使って,実際に注目を促す教材を作る方法を紹介しています(サンプルデータも配布しています).

良かったら手に取ってみてください.

読み書きに障害のある子どもを支援する

月刊 実践障害児教育」という雑誌で,発達障害のある子どもをテクノロジーで支援する方法についての連載をしています.

「テクノロジーで支援する発達障害のある子の困り感」という連載タイトルで,4月号から7回ものの連載です.初回の4月号は中邑賢龍先生(東京大学先端科学技術研究センター)に総括的なレビューをいただき,5月号からバトンタッチして私が各論的なお話しをしています.

コンセプトは「すぐに試せる」ということなので,あまり難しいテクノロジーの話に傾きすぎずに,無料で,すぐに実践してみることができるものを紹介しています.

5月号は,「読み書きに障害のある子どもを支援する」というタイトルで,読みを楽にする読み上げソフトや音声図書,文字入力を楽にする推測入力や,ICレコーダの活用などの紹介をしました.

記事中の体験コーナーでは,「Natural Reader」という,無料で試せる読み上げソフトと,HOYA社製の高性能な音声合成エンジンの体験方法を説明しました.
(この音声エンジンには何種類もラインナップがあり,おすすめはMisakiという音声エンジンです.でもこの夏,あたらしいHarukaという音声エンジンが登場するそうで,とても楽しみにしています.)

書店や図書館で読んでいただけたら嬉しいです.

2008年5月23日金曜日

DO-IT Japan 2008 参加者募集中!

昨年の第1回に続き,今年もDO-ITの季節がやってきました.
全国の障害や困難のある高校生の皆さん,東大で大学体験してみませんか?
どしどしご応募くださいませ.


障害のある高校生のための大学体験プログラム
DO-IT Japan 2008開催のご案内
(2008年7月23-27日)

「障害のある高校生のための大学体験プログラム『DO-IT Japan 2008』」が下記のとおり、東京大学先端科学技術研究センターにて開催されます。このプログラムでは、全国から選抜された障害のある高校生・高卒者にコンピュータとその人の障害に応じた支援機器を提供し、大学進学や将来の就職といった本人の希望の実現を支援します。

参加者は5日間の大学体験プログラムの中で親元を離れ、大学や企業で講義を受けるとともに、社会で活躍する障害のある人々との交流を図ります。さらに、その後のオンラインメンタリングを通じて、進路について自分自身で考え、選択するのに必要な知識や能力を身につけます。

DO-ITとは、Disabilities(障害)、Opportunities(機会)、Internetworking(インターネット利用)、Technology(テクノロジー)の頭文字をとったもので、最新のテクノロジーを活用しながら、大学進学と就労を目指す障害のある若者の自己実現と、多様性に対して開かれた社会の実現への寄与を目的として16年前に米国で誕生し、独自の取り組みを含めて昨年度日本で初めて実施されました。



日時: 2008年7月23日(水)~27日(日)
場所: 東京大学先端科学技術研究センター(東京都目黒区駒場4-6-1)
対象:大学進学を目指す障害のある高校生、高卒者
    (学年・障害の種類や程度・希望大学は問いません)
募集人数:約10名(応募受付は5月1日~31日)
参加費用:旅費と食費(参加費、宿泊代、機器利用料はDO-IT Japanが負担)
主催:DO-IT Japan、東京大学先端科学技術研究センター
共催:マイクロソフト株式会社
協力:ソフトバンクモバイル株式会社,株式会社トヨタレンタリース東京 他
後援:厚生労働省(申請中)、文部科学省(申請中)
学習テーマ:
・ 大学を知る(講義と研究室訪問)
・ITスキルの習得
・障害の理解
・暮らしのイメージをつかむ
・コミュニケーションの技法

応募書類を下記のホームページよりダウンロードいただけます。
DO-IT Japan(http://doit-japan.org/

事務局
TEL:03-5452-5490・090-8711-8522
FAX:03-5452-5490
E-mail:info@doit-japan.org

2008年4月28日月曜日

発達障害のある子どもに使える教材を探したいときには?

発達障害児のためのサポートツール・データベース(教材・教具DB)

http://www.jpald.net/research/index.html

国内で入手可能な教材を親の会がまとめたもの、と書かれています。本当にたくさんの教材が紹介されています。これをまとめる作業は本当に大変だったことと思います。とても興味深いですね。このDBにくっついて、活用法のノウハウが蓄積されるような情報源ができていけばいいなと思いました。

2008年4月12日土曜日

手紙の文章を考えるのが苦手なときには?

発達障害のある人の中には、ビジネスであれ個人的なものであれ、手紙やメールの文章を考えるのがとても難しい、と苦手意識を持っている人がいます。

とはいえ、直接会って話をするよりは、相手の話を聞き逃すことも少ないし、時間をかけて返信の文章を考えられるし、メールを日常のコミュニケーション手段として愛用している人も多いでしょう。しかし相手が会社の上司や取引先など、何らかの上下関係のある人であった場合、悪気なく書いた文章のつもりでも、読んだ相手が失礼だと気分を害してしまったり、時には怒らせてしまったりという経験が続いて、すっかり自信を失っている人もいます。

そんなときには、手紙やメールなどの文例を見ることができるサイトがおすすめです。「お詫び」「辞退断り」「感謝お礼」「相談」など、ビジネス用、個人用さまざまなバリエーションの文例を検索することができます。 こうした文章を参考にして、手紙の書き出しや結びの作法だけではなく、中身の言い回しを参考にすることができます。

直子の代筆
http://www.teglet.co.jp/naoko/

「あの人にお礼(or お詫び)をしないといけないんだけど、うまく伝わらないのが怖くて書き出すことができない」などと感じておられる方は、一度「直子の代筆」の文例を覗いてみられるといいかもしれません。中には「デートの誘い」とか「自分への慰めの言葉」とか、思わぬ文例もたくさん混じっていて、読んでみるだけでも面白いですよ。

2008年3月28日金曜日

厚生労働省の発達障害情報サービス

厚生労働省のウェブサイトに、以下のような情報ページができました。今後どんどん情報が充実してくるといいですね。


発達障害情報サービス:トップページ
http://www.mhlw.go.jp/ddis/a/index.html


全国の発達障害支援センターの連絡先も、以前はPDFでしか見られなかった(官公庁関係ではPDFでのみ公開、というスタイルが多くて多少不便です)のが、このサイトで公開されています。まだ準備中の部分も多いですが、今後が楽しみなサイトです。

2008年3月23日日曜日

落とし物や忘れ物を避けるためのツールと工夫

発達障害の人の中には、 落とし物や忘れ物がとにかく多くて、日常生活で本当に困っている人は多いと思います。ケータイ、お財布、メモ帳、ペン、傘のような小物類や、ときには外出先へ持って行っていたはずのバッグをどこかに置き忘れてしまった、またはどこに置いたかわからなくなってしまったという経験に悩まされている人は多いのではないでしょうか。

私もあるADHDの知り合いから、「探していた食器(グラス)がなくなってしまい、ある日、それがなぜか靴箱から出てきて大変驚いた」という話を聞いたことがあります。周囲からしてみれば笑い話にされることが多いのですが、本人にとっては毎日のことであり、本当に大きな困りごととなっています。日々、ちょっとしたことに注意を奪われたり、パニックを起こしてしまうことが日常になっている人では、周囲からの「いつも気をつけておかないからだよ」といわれても、逆に単なるストレスや自己嫌悪の元にしかなりません。

以前、忘れ物を見つけるためのキーホルダーをご紹介しました。こうしたツールは、視覚に障害のある人のように、探している物がどの位置にあるのかを見つけることが難しい人のために使われてきた経緯のあるツールですが、発達障害のある人にも役立ちます。


うっかりセンサー「SH-056PML」

http://www.jpcosmo.com/wasuremonoboushiki.htm


上記も同じようなコンセプトの製品で、子機をバッグなどなくしたくない物につけておき、親機を自分の手元に持っておきます。設定した距離以上に両者が離れると、音で知らせてくれる、というツールです。親機をなくしてしまったら元も子もないですが、親機はズボンなどにくくりつけておくなどなくさないような工夫を十分にして、すぐに手元から離れてしまいがちなもの(財布や携帯など)に子機をつければ、役に立つ場面があるのではないでしょうか。また逆に、近づくと音を鳴らす機能があるので、子機を付けた物をなくしてしまったときに、音を手がかりにそれを探す、ということもできます。

小物を良くなくしてしまう人に効果的なのは、「置き場所のルールを決めておく」ことですが、置き場所が自宅や出先でそれぞれ異なっていると、どこを場所に決めたかの混乱に津なることがあります。また、旅行先のホテルなど、いつもと違う場所へ出かけたときなどには場所を決めることが難しいくなります(ホテルに泊まると必ず忘れ物をしてしまう人、いませんか?)。そこで置き場所を決めるときには、どこであってもいい目印になるようなツールがあると便利です。


【アクセサリートレー】ボタントレー・ブラウン(生活セレクトショップ・トレフール)


http://shop.yumetenpo.jp/goods/d/trefle.co.jp/g/404026/index.shtml


上記のトレイ、普段は平面の一枚パネルなので、持ち運びも場所を取りません。そして使うときには四隅のボタンを留めてトレーにする、という製品です。上記のサイト以外でも、類似のものはいろんなところで販売されています(「ボタントレー」で検索してみてください)。布と厚紙、ボタンで自作しても良いかもしれませんね。このトレーを目印にして、いつもここに携帯電話や財布、時計や眼鏡などを置くようにすると、自宅でも出先でも「置き場所のルールを1つだけにする」ことができます。忘れ物に困っている人は試してみてください。






2008年3月12日水曜日

ルビ振りの自動化・追加情報「ひらがな・なびぃ」

ちょうど昨日の記事をアップしていたら、ルビ振りの自動化について、富士通ラーニングメディアさんから素晴らしいソフトがリリースされたという情報が入ってきました。Windows用のソフトウェアで、無償公開されています。学年ごとで学習する漢字レベルに合わせてルビや平仮名化を調整したり、日本語能力試験の水準に合わせて調節したり、文章の要約機能があったりと、とても多機能なソフトウェアです。

ひらがな・なびぃ:富士通ラーニングメディア
http://jp.fujitsu.com/group/flm/eco/hiranavi/



ひらがな・なびぃ
『ひらがな・なびぃ』は、インターネット上の漢字をひらがな変換して表示できるブラウザです。文部科学省の「学年別漢字配当表」を元に、インターネット上の漢字を学年単位でひらがなに変換し、表示します。さらに、インターネット上の有害情報をURLや単語単位で遮断できます。このほか、「リンク集」、「要約」機能を搭載し、充実したインターネット環境をご提供いたします。
 また、日本語を学習中の外国人の方も、自分の学習レベルに合わせ、日本語のホームページを読むことができるように漢字をローマ字で表示する機能もあります。

2008年3月11日火曜日

漢字の読みが苦手なときには?:ルビ振りの自動化

発達障害の中でも、読み書き障害や高次脳機能障害のために、文字を読むことが難しいと感じる人がいます。せめて漢字にルビを振ってくれれば読みやすくなるのだけれど、という人のために、利用できる自動ルビ振りサービスはいろいろと存在しています。読み書きに困難のある子どものために、頑張ってルビを手作業で振っているが、その作業がとても大変で苦労している人や、成人で読み書きに困難のある人で、読めないことに恥ずかしさを感じてしまい、なかなか周囲に読み方を聞けない人などにも便利なサービスです。

以下のように、文章中に含まれる漢字にルビを振り,読字の困難さを軽減する機能が,インターネットの複数のウェブサイトで誰もが試用できるサービスの形で無償提供されています.もともとは、子どもや外国人向けと銘打って用意されているサービスですが,もちろん読字障害のある子どもや成人にとっても、便利に使うことができます.



「キッズgoo(http://kids.goo.ne.jp/)」は,検索結果のウェブページに含まれる漢字の読みを,「漢字(かんじ)」のような形式で,括弧内に挿入してくれる子ども向けのサービスです.



「ルビ(ふりがな)振りサービス AddRuby(http://www.addruby.com/)」でも,任意のウェブページやテキスト内に含まれる漢字に,同様の形式で読み仮名を挿入することができます.


「YomoYomo(http://yomoyomo.jp/)」は,外国人向けのサービスなので説明が英語で少しわかりにくいですが、ページ上部のウィンドウにウェブページのURL(アドレス)を入力して、「ひらがな」と書かれたタブをクリックすればルビ振り機能が使えます。このサイト、MacOSXのSafariブラウザではうまく見られませんでした。WindowsのInternet Explorerでは見られます。



「ひらひらのひらがなめがね(http://www.hiragana.jp/)」はシンプルでいいですね。Windowsのブラウザでは、このように通常のフリガナ的に、漢字の上に読みを振ることができるのでわかりやすいですね。


こうしたサービスを活用することで,ルビ振りについては特別なソフトウェアを用意せずとも,私たちの誰もが容易にルビ振りを行うことができる状況にあります。ぜひ活用してみてください。

2008年2月14日木曜日

映画「音符と昆布」

生き別れだったアスペルガー症候群の姉と,「臭覚がない」けどフードコーディネーターとして働く妹が出会うことから始まる物語だそうです.どんなお話しでしょうね.私も見に行ってみたいと思ってます.六本木の映画館ほか,単館系の映画館で上映中です.

映画 「音符と昆布」オフィシャルサイト

http://www.onkon.jp/index.html
※注意!サイトにアクセスすると,いきなりテーマ音楽が流れ出します.

アスペルガー症候群の映画といえば,「モーツァルトとクジラ」は面白かったです.アスペルガー症候群の男女二人の恋愛について描いた,素敵な映画でした.お互いのこだわりが,優しくて激しくて傷つきやすい二人の付き合いをぎこちなくさせる様子にハラハラさせられました.そんな二人がどうなったのか,まだ見ておられない方はDVDでどうぞ.ジョシュ・ハートネット主演で,映画「レインマン」の脚本家ロナルド・バスが脚本を書いているそうです.

映画「モーツァルトとクジラ」オフィシャルサイト
http://www.mozart-kujira.jp/







2008年1月30日水曜日

考えがうまくまとまらないときには?(feat. 学校や職場で使える多彩な用紙フォーマットを入手する方法)

自分が何を考えているのか,自分自身でもよくわからない.困りごとについて考えをまとめようにも,どうもうまくまとまらない.そんな人のために,様々な「考えをまとめる・把握しやすくする」ための方法は世の中にたくさんあります.最近有名な「マインドマップ」や,伝統的な「KJ法」,「アウトライン化」など様々な方法があります(これらの方法についてはまた後日,関係するツールを説明します).

これらの方法はいずれにせよ,頭の中で考えていることを,とにかく図に書いて頭の中から外へ取りだし,把握しやすくする,という方法です.「手書き式コミュニケーションで相互理解を促進」の回でも書きましたが,誰かとコミュニケーションするときに,自分の考えや相手の考えを,言葉だけでなく図式化して見せ合うことはとても重要です.そして「自分自身との対話」でもある「考え事」のときにも,この方法を使わない手はありません.慣れない最初のうちは面倒ですが,とにかく下手でも何でも良いので,図に描く癖をつけていると,頭の中で混乱していることが随分すっきりしてきます.

気になることがいくつもあって,なんだか不安だ・・・と夜も眠れなくなることがありませんか?不安が高まって,やらなきゃいけないことがあるのになかなか手をつけられなかったり,つい避けてしまうことは?そんなときにも,図式化は便利な方法です.よく私は「心配事3つの法則」と言っているのですが,心配事や気になっていることを私たちが頭の中だけで上手に把握できるのはせいぜい3つ,いや2つ程度まで.2つくらいまでだと「あれと,あれが大変だから自分は今,ちょっとつらいんだ」と判断できます.ところが心配や不安がそれ以上に増えると,もうどれがどう関係し合っているのかよくわからなくなり,漠然と「人生全体がつらい」という悲観的な状況になってしまうことがあるようです.

ところが,「書き出す」という作業を行うと状況が少し変わってきます.「やるべきことをいつも忘れてしまう!を解決する」の回で,「やることリスト」を作るツールをご紹介しましたが,リストに書き出すだけでも,自分が抱えている気になること(=やらなきゃいけないこと)が把握できて,安心につながり,ずいぶん心が楽になります.「やることを山のように抱えて大変だ,と思っていたが,書き出してみるとそうたくさんでもなかった」と感じられる場合もあります.そこに気になることを図式化して理解する方法を組み合わせるとさらに良い,というわけです.

※ただし,抑うつ状態で気分がひどく落ち込んでいるときに図式化を行うのは要注意です.ひどく疲れてしまったり,ネガティブな感情が強く出て,図式自体が非常にネガティブな関係性を表したものになってしまい,さらに気分を落ち込ませてしまうかもしれません.気分が落ち込んでいるときや落ち込みがちなときには,誰か信頼の置ける人と一緒に相談しながら,というのがオススメです.

さて,以下のページは,そんな図式化をするときに便利な,様々なグリッド線の引かれた用紙を自動的に作ってくれるサイトです.英語のページですが,自分が欲しいと思うグリッドの引かれた紙の画像をクリックすると,用紙の設定画面が表示され,そこで選んだ好みの用紙設定で,PDFファイルをダウンロードすることができます.わざわざ専用の用紙を買わなくても,(プリンタは必要ですが)自分で印刷した好みのフォーマットの紙を使って,メモや描画ができます.

「方眼紙(Multi-Width)」を例にとって説明します.トップページにある方眼紙の画像をクリックして表示された画面で,用紙サイズ(PDF Document Size)や余白(Minimum Border),グリッドの太さ(Grid Line Weigh),グリッドの幅(Grid Spacing),グリッドの色(Grid Color)を設定することができます.おっと,標準ではサイズの単位が「インチ」になっているので,設定画面一番上の方にある選択肢(Set document units to: Inches or Centimeters)から「センチメートル(Centimeters)」をクリックして,単位をセンチにしておいてください.最後に,「ダウンロード(Download)」ボタンを押せば,設定済みのPDFファイルをダウンロードすることができます.

Free Online Graph Paper / Grid Paper PDFs
incompetech.com/graphpaper




上記のページには,方眼紙以外にも非常に多彩な用紙をダウンロードできるので,図式化はもちろん,職場や学校でも便利に使えますね.以下にどのような用紙があるかを挙げておきます.


グラフ用紙・方眼紙(Square Graph Papers)
・Graph Paper
・Multi-Width
・Dots
・Cross Grid
・Light Verticals
・Axonometric Perspective

グラフ用紙・多角形(Triangle / Rhombus / Hexagonal)
・Equilateral Triangle
・Octagonal
・Hexagonal
・Hex Dot
・Semi-bisected Trapezoid
・Iso-Dots
・Tumbling Block - Trapezoid
・Diamond - Trapezoid
・Equilateral Triangle Dots
・Variable Triangle

グラフ用紙・円形(Circular)
・Circular - Hex Pattern

グラフ用紙・非対称図形(Asymmetric)
・Asymmetric
・Asymmetric Graph Paper Generator
・Brick Layout
・Brick Graph Paper Generator
・Moorish Pattern
・"174 Paper"
・"Engineer's Paper"

専門家向け(Specialty)
・出納帳(Accounting - Ledger Paper)
・Log/Semi-Log
・Polar Graph Paper
・ストーリーボード(Storyboards)
・五線紙(Music Notation Staves)
・ギターやベースのタブ譜(Guitar / Bass Fretboard Diagrams)
・数直線(Number Line Paper)
・Celtic Knot / Celtic Knotwork Graph Paper
・透視図法(Perspective)

ノート・テイキング(Writing / Penmanship / Note-Taking)
・Lined Paper
・Writing and Penmanship Paper
・Double Lined Writing and Penmanship Paper
・コーネル方式:ライン(Cornell Lined)
・コーネル方式:グラフ用紙(Cornell Graph)
・コーネル方式:音楽(Cornell Music)
・漢字筆記用紙1(Chinese Character Guide Paper - Hex Style)
・漢字筆記用紙2(Chinese Character Guide Paper - Hash Style)
・漢字筆記用紙3(Chinese Character Guide Paper - X Style)
・Calligraphy Guideline Paper
・漢字練習帳(Japanese/Chinese Character Guide Paper)

2008年1月19日土曜日

音や騒がしさに対して敏感過ぎて辛いときには?

聴覚性の感覚過敏,作業への集中困難を感じたことがありませんか?

発達障害,特に自閉症スペクトラム障害には,聴覚や視覚,触覚など,感覚に過敏症がある人がいます。聴覚過敏はよく知られている困難さで,騒がしい場所や突発的な音,または特定の音の種類(赤ちゃんの泣き声,金属音など人によって様々)などに対して強い不快・ストレスを感じることがあります。強い過敏性のある人では,作業への集中が難しくなったり,重い場合は騒音のある場所への外出が困難になる場合もあります。そうした聴覚の過敏性のある人には,いくつか便利なツールがあります。

(1)ノイズキャンセリングヘッドフォン
(2)特殊耳栓,イヤーマフ各種
(参考:安全モール http://www.anzen.ne.jp/soundproof/category_soundproof.html



図1. BOSE社製 クワイアット・コンフォート2



図2. 各種耳栓

ノイズキャンセリングヘッドフォンは,周囲の音のうち,エアコンやパソコンのファンの音,電車や飛行機で移動しているときの騒音などなど,持続的な騒音を選択的に低減してくれる機器です。人の話し声や,突発的な音などはそれほど低減しません。個人的な感想ですが,各社から発売されている製品のうち,BOSEのクワイアットコンフォート・シリーズのノイズ低減機能は出色の出来だと思います。ただし,価格も最も高価ですが・・・。

ただ,このヘッドフォンの良いところは,自閉症児などにも使われることの多い遮音性の高いイヤーマフと違って,ヘッドフォンのサイズがとても小さく,一般的なヘッドフォンと違いのないところです。ヘッドフォンの耳を覆う部分自体が遮音性を持つ素材できているタイプの製品は,私も持っていますが非常に大きくて目立つなあと思うことがあります(刑事ドラマなんかで,射撃場で銃声の爆音から耳を守るためにつけるイヤーマフと同じようなものですし)。

ポリウレタンなど特殊な樹脂で出来た柔らかい耳栓は,指でつぶして細くした後に,耳穴に差し込むと,段々と元の大きさに戻るので,耳穴全体をきれいにふさいでくれます。そのため遮音性能がとても素晴らしいです。値段も一個百円以下のものもあり,とても手頃です。

一度テストのためにと,耳栓をつけたままで街を歩き,電車に乗ったのですが,私自身,日頃いかにちょっとした物音に注意を奪われているかがよくわかり,とても驚きました。やってみて初めてわかることはやはりあるのだなと思いました。周囲の音に無駄に注意を引きつけられることがなくなると,私の場合はいつもより落ち着いて移動することができました。電車での移動の時にも周囲のざわざわした音や電車のガタンゴトンという音が気にならなくなり,随分ストレスが少なくなったように感じました。

※要注意点!ただし,耳栓は危険回避のために必要な音まで遮断してしまうのが玉にキズ。外で移動するときには,近づいてくる車などを見落としてしまうことがあるかもしれませんので,屋外での使用は要注意です。耳栓を屋外で使用することは私は推奨しません。諸刃の刃ですね。この辺りの安全性と遮音性のトレードオフについては,最適な基準に関わる見解について研究をせねばと思っています。

発達障害への適用ポイント

・移動中など,音が聞こえないこととが問題になるような場面で,遮音性の高すぎる樹脂製の耳栓等の着用は注意を要しましょう。ノイズキャンセリングヘッドフォンや耳栓の影響かどうかはわかりませんが,最近はiPodなど携帯用の音楽プレーヤーとヘッドフォンを身につけて,音楽を聞きながら移動することがごく一般的になっているので,そうした人が電車に轢かれるなど,人身事故につながった例がニュースで話題になることもあります。

・耳栓など音を制限するツールで日常のストレスが低下することは,実際に着用して過ごしてみないと直感的にわかりにくいところがあります。耳栓をつけると,日常生活では,普段私たちは意識せず,不要な音を効率よく「無視する」ために無意識のうちにエネルギーを使っていることがわかります。不要な音がそもそも存在しないと,無視する努力が不要となり,注意を逸らされることも少なくなるので,主観的に非常に楽になります。


<1月30日追記>
クワイアット・コンフォートは「2」の画像なのに「3」と書いていましたので修正しました.ちなみに現在,私は「3」を使っています.耳を覆ってしまわないオープンタイプなので,蒸れたりすることもなく,長時間着用する分には楽に感じています.







2008年1月11日金曜日

予定や約束を忘れがちだったり、予定管理が苦手な人には?

新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

さて、新年一発目は、昨年12月のATAC2007の講義で活用法方をご紹介した、ネット上のカレンダーサービスの活用例です。ブログでも解説を掲載してほしいという要望が多かったものなのに、ずいぶん遅くなって恐縮です。ちょうど新年の始まりにあたって、今年の予定管理をこちらで試してみてはいかがでしょうか。

「Googleカレンダー」という、ブラウザから使うことのできるカレン ダーサービスがあります。以下のアドレスにアクセスしてユーザ登録すると、誰でも自分専用のカレンダーを無料で使うことができます。


Googleカレンダー
www.google.com/calendar

一見すると、日ごと、週間、月間で予定を表示してくれるシンプルなカレンダーです。しかしながら、活用法によっては発達障害のある人にとっても、便利に使うことができます。

まず第一に、予定のメールによる「リマインダ(忘れていないかお知らせしてくれること)」が役に立ちます。Googleカレンダーは、リマインダとして、携帯電話のメールアドレス宛に、予定のお知らせメールを飛ばすことができます。これを登録しておけば、予定表を自分で見返さなくても、予定表の方からあなたの携帯に「時間ですよ」とお知らせをくれるわけです。

以前の記事でも書きましたが、たとえ予定を手帳などにメモしていても、メモしたこと自体を忘れていたり、適切なタイミングで見返すことができずに、予定を逃して、困ってしまう人がいます。そうした人にはこのようなリマインダ機能を活用することを勧めています。

予定開始のどれくらい前にメールを送るかは、好みの時間を設定することができます。たっぷりと余裕を見てお知らせするか、予定のちょっと前にお知らせするか、パニックにならない程度の、ご自分のペースにあったお知らせ時間を探してみてください。

また、お知らせメールを送るか送らないかを、予定一つ一つに別々に設定することもできます。リマインダを送らないでもいい予定は、個別にお知らせメールをオフにしておけばオッケーです。

最近の携帯電話であれば、標準で予定表機能が備わっているものも多いので、Googleカレンダーではなく、こちらを使う手もあります。しかしながら、Googleカレンダーと携帯へのメールリマインダ機能の組み合わせの方が優れている点が以下のようにいくつかあります。

<入力しやすさ、見やすさ>
・パソコンで一気に予定を登録できるので、携帯からの文字入力が苦手な人でも楽に予定を登録できます。
・日ごと、週ごと、月ごととパソコンの広い画面で予定を一覧できます。カレンダーはインターネットエクスプローラなどで表示するわけですから、フォントサイズも大きくしたり小さくしたり自由に変えて、見やすくすることができます。
・「仕事」「プライベート」「イベント」など、好きな名前をつけた複数の予定表を作成することができます。予定表ごとに見やすく色分けも可能です。

<周囲の人との予定の共有>
・標準では自分以外の人は予定を見ることはできませんが、設定で許可を与えた人であれば、自分以外でも自由に予定の変更や追加が出来ます。親や教師、またはセラピスト、職場の管理者、余暇活動での仲間などなど、周囲の人が連携して発達障害のある当事者の生活支援にあたるときにも役に立ちます。みんなでひとつのカレンダーを共有して、各自が予定を入力したり、確認したりできます。
・通常のスケジュール管理以外にも、服薬管理(薬を飲むのを忘れないように、時間になったらメールで自動的にお知らせ)などにも使えます。

<その他の工夫>
メールでのリマインダ機能と、通常の携帯電話が持っている機能を組み合わせると、いろいろな楽しい工夫ができそうです。たとえばこんな工夫はいかがでしょうか。

<音声でお知らせ>
ほとんどの携帯電話には、メールの送信元アドレスごとに、着信音を変える機能があります。最近の機種であれば、着信音だけではなく、その携帯で撮影した写真や動画を流すこともできます。

Googleカレンダーの場合は、「cal-not@google.com」というアドレスからメールが送られてきます。なので、このアドレスからメールが来た場合の着信音に、自分で録音した音声を割り当ててみると活用にも広がりが出ます。

たとえば、「次の予定の時間まであと10分ですよー。メールを確認してね」と促したり、服薬管理など特定の予定の管理だけに絞れば、「お薬を飲む時間です」など。ただし後者の場合は、予定の内容は無関係になるというデメリットもありますが、メールを読む操作が難しい人の場合にも、携帯を持っておくだけで音声のお知らせを聞くことができるというメリットがあります。

メール到着に合せて音声ではなく動画(たとえば服薬している動作や薬の映像など、予定された活動の内容を視覚的に伝えるもの)を流せば、耳で聞いて理解することが苦手な人にも有効ですね。携帯の機種によりますが、「着ムービー」などという名称でメール到着に合せて動画を流す機能がある携帯があります。

以上のように、携帯電話とカレンダーサービスを組み合わせると、先の見通しをつけたり、予定を忘れないようにすることを助けるさまざまな工夫が可能です。

ほかにもいろんな活用が考えられますから、ぜひ皆さんも試してみてくださいね。